1990 年 1990 巻 27 号 p. 1-6
現役競走馬の骨折は前肢の中手指節関節に多い。骨折多発部位である第三中手骨骨折は, 遠位部の骨硬化あるいは骨壊死巣からしばしば生じる。骨折の内因的要素を調べるため, 第三中手骨骨折症例および非骨折対照例各4例の中手骨遠位部について, 水平鋸断骨片の軟X線像と対照例のそれを画像解析により数理形態学的に比較検討した。さらに各骨を脱水脱脂後乾燥, 粉末化した後螢光X線分析によって20元素のミネラル成分を測定した。その結果, 両群とも形態学的に第三中手骨遠位掌側部に骨硬化性変化がみられたが, 骨形態計測では両群に有意差は認められなかった。また, 同部位のミネラル成分分析ではFeを除く19元素で, 両群に有意差は認められなかった。すなわち, 競走馬の骨折多発部位である第三中手骨遠位部では, 骨折および非骨折群の骨形態計測値およびミネラル成分値にほとんど差が認められないことから, 第三中手骨骨折の内因的要素の解明にはFeめ意義についてさらに明らかにするとともに, 骨の物性およびコラーゲン配列についての究明が必要である。