日本中央競馬会競走馬総合研究所報告
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輸送中のサラブレッド種に発症した横紋筋融解症の4症例
伊藤 忍藤井 良和内山 孝志兼子 樹広
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1992 年 1992 巻 29 号 p. 1-5

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抄録

馬運車での輸送中に苦悶症状を呈して横臥状態となったサラブレッド種競走馬4頭の臨床, 血液, 組織所見について検討した。4頭中2頭は治療によって治癒したが, 1頭は予後不良で安楽死, 1頭は斃死した. 主な臨床所見は腸蠕動の廃絶あるいは亢進, 筋硬直, 排尿困難, 赤褐色尿であった. 血液所見は血液濃縮とCPKの著増が特徴的であり, 重篤な症例ではGLDHとBUNの漸増を認めた. 組織所見は広範囲に及ぶ骨格筋線維の変性が観察された. これらの所見から輸送に起因する横紋筋融解症と診断された. 臨床的に本疾病は変位疝あるいは便秘疝と所見が類似することから, 類症鑑別としてCPK値の上昇度の相違が有用と考えた. 治療方法は多量の輸液と鎮痛剤, 副腎皮質ステロイド, 循環改善薬, 利尿剤, 抗生物質を適宜に合わせて投与することが効果的であった. 本疾病の発症要因は, 輸送に対する各個体の体質的な素因によるものと考えられた. また, この疾病は再発をみることから, 2回目以降の輸送に際しては細心の注意が必要である.

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