Japanese Journal of Equine Science
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美術解剖学から見たウマのポーズ表現
柴田 眞美
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1993 年 4 巻 1 号 p. 45-54

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抄録
 本研究では,体表のレリーフ表現について調べた前報に引き続いて,古今東西の造形作例(267作例)に描かれたウマのポーズについて,独自の指標を用いて実際のウマの歩行運動中の位相と比較し,その表現方法の特性について検討した。 分析指標を作成するために,数頭の実馬に各種の歩行運動をさせ,それをVTRカメラで撮影した。その映像からウマの動作を1コマ毎(30Hz)に作図し,こたらの位相を着地肢の組合せによって分類し,作例分析のための指標とした。各作例について,そこに描かれたウマの着地肢の組合せ,四肢の配置パターン,そして全体の姿勢,の3つの視点から分析指標と照合し,描かれた歩法とその四肢の位相を判定した。 その結果,全体の83%にあたる222作例が,分析指標のいずれかの位相に分類する事ができた。また,描写頻度の高さから判断して,造形上で好まれるポーズは,次に示すグループとして捉えることができた;両後肢で立ち上がっているポーズ,対角前後肢が着地している速歩のポーズ,四肢全てが地から離れているリーピングギャロップもしくは同じ位相の飛越のポーズ,1方の前肢と両後肢が着地している常歩のポーズ,両後肢が着地しているリーピングギャロップもしくは同じ位相の飛越のポーズ,の5ポーズ,あるいはこれらに類似したポーズである。一方,造形表現上であまり用いられないポーズは,四肢すべてが着地している駈歩のポーズ,両前肢と一方の後肢が着地している常歩もしくは同じ位相の駈歩のポーズ,対角前後肢が着地している駈歩もしくは同じ位相の襲歩のポーズ,両前肢が着地しているリーピングギャロップもしくは同じ位相の飛越のポーズ,一方の前肢が着地している襲歩,同じ位相のリーピングギャロップ,もしくは同じ位相の飛越のポーズであった。 さらに,時代あるいは地域別にその作例を検討した結果,美術解剖学の分野で「詩的真実」と呼ばれている「造形表現と実体との相違」について考察する際に大変興味ある問題がいくつか提示された。
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© 日本ウマ科学会
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