2023 Volume 23 Issue 01 Pages 116-131
吉田 真理子(津田塾大学) 執行 智子(東京未来大学)
カレイラ松崎 順子(東京経済大学) 舩田 まなみ(白百合女子大学)
要旨
本研究では,小学校教員養成課程の授業に,英語の児童文学の作品を題材としたドラマワークショ ップを取り入れる試みを行った。その結果,本研究に参加した学生たちは,体験を振り返って,ドラマワークショップを楽しみ,やりがいと達成感を覚え,英語の実践的な学びともなる気づきを得た。よって,児童文学の作品を取り入れ,体験的かつ省察的に学ぶ機会を作ることが小学校教員養成に肝要であると考える。
2019 年度から実施されている小学校教員養成課程外国語(英語)コア・カリキュラムでは,「外国語の指導法」と「外国語に関する専門的事項」が想定されている。「外国語に関する専門的事項」にお いては,「授業実践に必要な英語力」「英語に関する背景的な知識」を学習することになっており,「授業実践に必要な英語力」には「聞くこと」「話すこと(やり取り・発表)」「読むこと」「書くこと」が,
「英語に関する背景的な知識」には「英語に関する基本的な知識(音声・語彙・文構造・文法・正書法等)」「第二言語習得に関する基本的な知識」「児童文学(絵本,子ども向けの歌や詩等)」「異文化理解」が含まれている。
本研究は,「初等英語」の授業において,「外国語に関する専門的事項」に含まれる「授業実践に必要な英語力」「英語に関する背景的な知識」を連動させて(粕谷,2021)体験的に習得する機会を作る提案である。すなわち,授業の一環として英語の児童文学を題材としたクリエイティブ・ドラマのワークショップ型活動を取り入れ,小学校の教員をめざす学生たちが,その体験をどのように受けとめたかを学生たち自身の振り返りをもとに考察することで,「外国語に関する専門的事項」の授業のあり 方に示唆を与えることを目的とする。
クリエイティブ・ドラマの起源をたどると,経験主義的教育,全人教育,アート教育を背景とし て,子どもの個人的・社会的成長を育む方法論のひとつとして誕生し(吉田,2022),1977 年にはアメリカの児童演劇協会によって以下のように定義づけられている。
クリエイティブ・ドラマは,即興的で,作品として観客に見せることを目的としない,プロセス重視型のドラマ活動である。参加者は,ドラマリーダーに導かれて,人類が経験してきたことについて想像し,演じ,深く考え省察する。クリエイティブ・ドラマは,従来,子どもや青少年を対象として考えられてきたものではあるが,対象年齢を限定するものではなくどの年代層にも適 した活動である。(McCaslin,2006 筆者による訳出)
クリエイティブ・ドラマにおける「即興」については,前もって大まかなプランは立てても,からだ の動きやせりふのやりとりなどの詳細は player(演じる人)に任されていることを特徴とする
(Ward,1957)。即興的なドラマの主な形態としては,dramatic play(劇遊び),story dramatization
(物語の劇化),パントマイムや影絵芝居,人形劇などがあるが,クリエイティブ・ドラマといえ ば,story dramatization を指すことが多い(Ward,1957)。その場合の物語として,主に文学作品,ほ
かには歴史上の出来事や時事を題材とし,劇化をとおしてその物語を蘇らせ,子どもたちがその物語世界を体験することにねらいがある。story dramatization にはプロットがあり,始まり,山場,終結という流れがある。また,即興を基本とするため,幾度演じ直しても全く同じものにはならない点が, 台本のある劇とは異なるクリエイティブ・ドラマの特徴である。
また,即興に不可欠なのが対話である。演劇指導者・教育者の Spolin(1999)によれば,即興とは自分ひとりでつくり上げるものではなく,協働で問題解決にあたることである。よって,人との交わ り,関係性,そして相手との対話が欠かせない。即興演劇の演出家・教育者である Johnstone
(1999)によれば,人は生来もっている即興性と創造性を,成長し社会化する過程で直面する 3 つの
「恐れ」によって削がれてしまう。それは➀評価への恐れ ➁未来や変化への恐れ ➂見られることへの恐れである。その「恐れ」から解放され即興性と創造性を取り戻すには,相手と「一緒にいる」 という意識をもつことであると説く。そして,相手の言動によって自分が変われることが肝要である と言う。今ここに相手と共にいて,リラックスして,相手に対して開き,相手から出されたアイディ アを受け容れていくこと,そしてそれによって自分を変えていかれることこそが,相手から受け取っ たものに対して自発的に反応していくことである。つまり,Johnstone も Spolin と同じく,即興における対話の重要性を主張している。
では,クリエイティブ・ドラマに参加することは,どのよう な学びにつながるのか。Siks(1983)は,初等教育におけるクリエイティブ・ドラマの実践に基づき,子どもたちの, player,playmaker(ドラマをつくる人),audience(観客)という 3 つの役割を担う体験による学びのプロセスを図 1 のように示している。その中の「知覚する」は,子どもが自分の五感に響いたものについて自分の記憶にあるものと関係づけることである。ドラマにおける「知覚」という場合,たとえば布の色や 動線,声の調子に気づくといったごくシンプルなレベルから,
ドラマの player あるいは playmaker としてドラマの登場人物にどのように命を吹き込むか,あるいはaudience として,登場人物がどのような人物として描かれているかを理解する,といったレベルもある。「反応する」については,子どもたちがドラマをつくっていく過程において,ドラマの player, playmaker,audience として創造的に反応していくことである。「コミュニケーションをとる」とは, 自身と経験を共にする他者とインタラクションをもつプロセスである。ドラマのなかで,子どもたち は言語と,からだの動きやジェスチャーなどの非言語を通じてコミュニケーションを図ることを学 ぶ。「評価する」とは,ドラマの完成度の高さを判断するものではなく,player,playmaker の役割を担いその役割としての努力や取り組みについて振り返り自己評価する学びである。また,audience という役割を体験することで,player,playmaker としてのねらいや取り組みを知り理解して省察し,改善点があれば前向きなフィードバックをする学びである。図 1 の学びのプロセス一つひとつは分断され個々に独立したものではなく,相互に関わり合い連関性と連続性のあるものである。
McCaslin(2006)は,クリエイティブ・ドラマの活動が,児童・生徒にとってどのような学びの機会になるかについて,以下の 11 項目に整理している。①想像力を育む ②自立的に考える ③グループでアイディアを検討し育てる ④協働について学ぶ ⑤多様な社会における社会的気づきを育てる ⑥感情を健全な方法で解き放つ ⑦語彙力をつけ発話と表現力のよい訓練となる ⑧優れた文学を味わい鑑賞する ⑨芸術としての演劇に触れる入り口となる ⑩レクリエーション(自らを再創造する,re-create oneself) ⑪特別支援が必要な子どもたちの潜在的な力を引き出し教科への興味を喚起する。さらに,教師がクリエイティブ・ドラマから得るものの中で最も大切なことは,一人ひとり の児童・生徒に対する教師自身の見方や捉え方が広がることである。そして,教師が授業のなかでの活動計画をしたうえで失敗を恐れず挑戦してみることで,失敗から多くのことを学び,経験を積むことで技術も身につく。また,授業での活動の評価の仕方については,学習者の個人およびグループの メンバーとしての成長を観察することで,成果よりもプロセスに焦点を当てることができる。時によ って,励ましたり,誉めたり,建設的な批評をすることが,学習者の成長や技能・批判的思考力・表現力を伸ばす助けになると説いている。
Lütge(2013)は,教室における外国語としての英語に児童文学を用いる意義について,児童文学に極めて特徴的な「異質なもの(otherness)」の体験に着目している。その状況設定は,遠く離れた地や魔法の国などである。学習者は自尊心と異質なものを肯定的にとらえる態度を育む過程で,自分の視 点の変換や調整を求められ,それはすなわち異文化理解力を伸ばすために肝要であると述べている。Alice’s Adventures in Wonderland(『不思議の国のアリス』Carroll, 1993, 初版 1865 以降 Alice’s
Adventures)の場合,主人公アリスが体験する「異質なもの」は,アリスがみた夢(ワンダーランド) という文脈においてである。物語のはじまりで,上着を身につけ,そのポケットから時計を取り出す 白ウサギを目にしたアリスは,好奇心に燃えて「異質」な世界へつながっていくウサギの穴へ自ら飛 びこんでいく。最後にワンダーランドから現実世界へと戻ってきたアリスは,「なんて素晴らしい夢だ ったのかしら(what a wonderful dream it had been)」と思っている。「異質」な世界への飽くなき好奇心と探求心,そして初めて出会うものたちと自ら進んでコミュニケーションをとろうとする主人公アリ スの前向きな姿への共感は,異文化理解への手がかりとなる。
本研究の題材として取り上げたのは,Alice’s Adventures を基に作家自身が書き直した The Nursery “Alice”(『子ども部屋のアリス』Carroll, 2015, 初版 1890)である。ルイス・キャロルが,実在した少女アリスにせがまれ即興的に語り聞かせるストーリーテリングから生まれた Alice’s Adventures から四半世紀を経て執筆された The Nursery “Alice”は,0 歳~5 歳の幼い聞き手に向けてアリスの冒険談を語り聞かせるストーリーテリングの文体で描かれている。“Once upon a time, there was a little girl called Alice: and she had a very curious dream.”から始まるストーリーテリングは,作家ルイス・キャロルの声が読み手の耳にも響いてくるような筆致である。幼い聞き手が五感をつかってアリスの物語を楽しみ 想像しやすいように伝えるストーリーテラーとしての工夫が随所に見受けられ,いわばストーリーテ リングの指南書ともいうべき側面をもつ作品でもある。
上述した The Nursery “Alice”を題材として,2018 年に小学校教員を対象に行った「英語文学」のドラマワークショップ型の講習が,本研究の土台となっている(吉田, 2021)。当該ワークショップでは,参加した教員たちの振り返りから,グループワークのなかで作品を協働的に読み込む楽しさ,調べ学習により作品を「味わう」読み,「深い」読みへとつながる気づき,英語でのドラマ化にグループで取り組むことが主体的・対話的で深い学び合いにつながる気づきを,参加者たちが得られたことが明らかになった。また,2 日間に渡って行われた当該ワークショップは「小学校で絵本をもとに同様の過程で授業を組み立てることが可能で実践につなげられ大変有益」との評価もあった。
教室におけるクリエイティブ・ドラマの活動が,学習者および教師にとってどのような学びの機会 となるかについては本稿 2.1 で述べたとおりである。本研究では,小学校教員養成課程において,2019 年度から実施されている小学校教員養成課程外国語(英語)コア・カリキュラムにおける「外国語に関する専門的事項」の授業に The Nursery “Alice”を題材としたクリエイティブ・ドラマのワークショップを取り入れる試みを行い,小学校教員をめざす学生たちがそのワークショップ体験をどのように 捉えたかを調査し,その分析をもとに「外国語に関する専門的事項」の授業のあり方に示唆を与えることを目的とする。
本研究の参加者は,東京都内大学小学校教員養成課程の「初等英語」を履修する3 年生 37 名(2 ク
ラス)である。「初等英語」では,前半で絵本やナーサリーライムを用いた講義形式,後半の授業 4 回
(2021 年 6 月~7 月)はドラマワークショップの形態をとった。「初等英語」におけるドラマワークショップの目的を「英語で読んだ文学作品を,ことば(外国語)とこころ,からだを通して表現し伝え 合う」とし,コア・カリキュラムにおける「英語に関する背景的知識」と「授業実践に必要な英語力」 を統合的に習得する(粕谷,2021)活動となるよう計画した。なお,ワークショップの「事前学習」およびワークショップの日程と内容は表1の通りである。参加者は 4 つのグループに分かれてルイス・
キャロルの生涯と時代について調べ,ワークショップに入る直前の
10 回目の授業で発表し合うことで,情報共有を行った。ワークシ
表1 事前学習とワークショップの日程と内容
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ョップでは「英語で読んだ作品の内容を伝える発表(英語)の方法を考える」「準備とリハーサル」「発 表,振り返り」の段取りで進めた。参加者は,毎授業後に「振り返りシート」を記入し教員に提出した。振り返りの項目は,「本時で学んだこと」「疑問に思ったこと」「感動したこと」「今後の自分の英語学習に生かしたいこと」「その他」である。
本研究では授業参加者に授業最終日に質問紙調査(ARCS 動機に関する質問紙項目・自由記述式の項目)を行った。
The Nursery “Alice”を題材とした英語のドラマワークショップが学習意欲を促進するものであったかどうかを調べるために ARCS 動機づけモデルによる学習者評価を行った。ARCS 動機づけモデルは, 学習意欲を「注意」(Attention),「関連性」(Relevance),「自信」(Confidence),および「満足感」(Satisfaction)の 4 側面からとらえ,学習者のプロフィールや学習課題/環境の特質に応じた意欲喚起の方略をシステム的に取捨選択して教材に組み入れていこうとするものであり,Kelle(r 1983)によって提唱された。
「注意(Attention)」とは,「『面白そうだ,何かありそうだという学習者の興味・関心の働き』を示し,これによって新奇性が生まれ,知覚的な注意を促したり,不思議さや驚きによって探究心を刺激したり,マンネリ化を避けることが含意されている」(明比, 2021, p.17)。「関連性」は,「学習課題が何であるかを知り,意義がありそうだと思うことを意味」(p.17)する。「自信」は,成功の体験を重ねたり,それが試行錯誤や自らの工夫の成果だと感じさせたりすることを示」(p.17)している。「満足感」は「学習を振り返った時,『努力が実を結び,達成感や他者からの賞賛がある』という感覚をもつこと」
(p.17)である。本研究ではこれらの ARCS 動機づけモデルの 4 つの側面の定義に基づいて,「ドラマワークショップに関する項目」「英語での発表に関する項目」「原作を英語で読むことに関する項目」に関して 12 項目を作成した(表 2, 3, 4 を参照)。なお,参加した学生は各項目において「あてはまら
ない」「あまりあてはまらない」「まあまああてはまる」「あてはまる」から自分にあてはまるものを1
つ選んだ。
質的調査方法については,ドラマワークショップ最終回の「振り返りシート」の記述と質問紙調査の自由記述をもとに,帰納的なアプローチによるコーディングとカテゴリー化(佐藤,2008)を行い,学生のドラマ発表 2 回の録画,各グループのドラマ発表時に web 会議ツールのチャットに書き込まれた学生たちのフィードバック,および授業の参与観察を参考資料として,分析を行った。
本研究では,実施に先立ち,研究の趣旨,ならびに,質問紙調査の回答内容が各学生の成績に影響を及ぼすことはないこと,個人情報は匿名化され厳重に管理される旨を口頭で参加者全員に説明し, 同意を得たうえで実施した。
表 2 は「ドラマワークショップの活動」に関する質問紙調査の結果である。「ドラマワークショップの活動は楽しかったですか」「ドラマワークショップの活動はやりがいがありましたか」「ドラマワークショップの活動に満足しましたか」に関して 9 割以上の学生が,「ドラマワークショップの活動で自
信がつきましたか」では 8 割弱の学生が「そう思う」「とてもそう思う」と思っていることが明らかになった。
表2 ドラマワークショップの活動に関して
表 3 は「英語での発表」に関する質問紙調査の結果である。9 割以上の学生が「英語での発表は楽しかったですか」「英語での発表はやりがいがありましたか」,約8 割の学生が「英語での発表に満足
しましたか」,さらに,約 7 割の学生が「英語での発表で自信がつきましたか」に関して「そう思う」
「とてもそう思う」と思っていることが明らかになった。
表3 英語での発表に関して
表 4 は「原作を英語で読むこと」に関する質問紙調査の結果である。約9 割弱の学生が「原作を英語で読むことは楽しかったですか」「原作を英語で読むことはやりがいがありましたか」「原作を英語で読むことに満足しましたか」,約 7 割の学生が「原作を英語で読むことで自信がつきましたか」に関して「そう思う」「とてもそう思う」と思っていることが明らかになった。
表4 原作を英語で読むことに関して
これらのことから,参加した多くの学生は本研究で行ったドラマワークショップを注意・関連性・満足感・自信の観点で高く評価していたと言えるであろう。
学生たち一人ひとりにとって,「初等英語」の授業の後半 4 回での The Nursery “Alice”を題材としたドラマワークショップの活動,英語での発表,原作を英語で読むというのはどのような体験だったの か,学生たちの記述から検討していく。なお,記述を引用する際はすべて匿名とし1〜37 までの通し番号を用いる。また,引用した記述に施されている下線はすべて筆者による加筆である。
本項では,本来講義形式の授業のなかで,4 回に渡ったワークショップ型の活動体験をどのように捉えていたのかを学生たちの記述から明らかにする。
ドラマワークショップの活動に興味・関心を抱き,活動に参加する意義を見出し,参加したことへ のやりがいを感じ満足度を得られたと評価する学生が 90%を越えた(表 2 を参照)。しかし,ワークショップ開始時から学生たちが活動に高い関心を示していたわけではなく,37 名中 11 名の学生はこれから始まる活動に消極的であった。以下に振り返りの一部を紹介する。
「めんどうだな」と感じていた(学生 23)
英語への苦手意識からくる緊張感,「難しい」「全くできない」という思い込み,活動のねらいが見えないことによる「やらされている感」「なぜやらないといけないのか」という疑問から「やる気が起きない」心理状態に陥っている。では,4 回の活動を終えた後には,ワークショップに参加して「楽しい」と多くの学生が感じることにつながった要因は何か,以下で検討していく。
今回のワークショップでは,講義形式の授業とは異なり 4 回の授業のなかでは,前もって学生主導で決められた小グループ(4 人~5 人)の単位で活動は進められた。そのグループワークの楽しさに言及した記述は 37 名中 9 名であった。
小グループという形態での活動の楽しさの 1 点目は,1 からグループで作り上げる楽しさ,グループの自主性に任されている楽しさである。2 点目は,グループ構成メンバー一人ひとりが,他者に遠慮することなく主体的に意見を出し合い,そしてお互いの意見を尊重し受け容れる合う対話的な姿勢が育まれることで新たな発見が生まれることである。その協働的に取り組むプロセスを楽しみながら最終的な発表へと一丸となって向かうグループの結束性(Forsyth, 2006)が生まれることで,学生たちの楽しさと達成感につながることが,記述から読み取れる。
ワークショップ4 回の流れについては初回で教員が説明しているが,「何のために」「なぜやらないといけないのか」疑問に思っていた学生たちが複数いたことは本項(1)で既に述べたとおりである。 しかし,ワークショップの回を追うごとに,やりたいことや目指している方向が明確になっていく手 応えを学生自身が感じられることで,英語の物語世界に共感的に入り込み,物語に「愛着」も湧くこ とが以下の記述から見えてくる。
4 回の活動を終えた後に「楽しい」と感じる要因の一つとなっていることがわかる。
本稿 3.2 で述べたとおり,作家や時代背景等,各グループに課された『アリス』に関連するトピックについての調べ学習とそれに基づく発表によるクラス全体での情報共有は,「事前学習」としてワー クショップ型授業開始以前に行われている。しかし,ドラマワークショップの活動の振り返りにあたって,このワークショップ開始以前の調べ学習に言及している記述は37 名中10 名と3 割近くあった。
ディズニーのアニメで見たことはあったが,原作のことや作者ルイス・キャロルについては全く知 らなかったので,今回,原作や作者のことについて調べたり学習したりして,アリスに以前より親しみ やすくなったように感じた(学生 20)
実際にルイス・キャロルについて調べることでアリスを読む前にどんな人物だったかの理解をする ことができ,アリスをどんな想いで描いたのかを知ることができたため,ただ英語でアリスを読むだけでなく,アリスについての理解をして読むことができてとても楽しく読むことができた
(学生 25)
調べ学習のおかげで徐々にアリスのことについて知りたいなと思うようになった。英語だけれど きっかけが見つかればやる気につながると感じた(学生 35)
調べ学習は,『アリス』の物語への親近感と関心をもつきっかけとなっている。また,作品をいきなり 英語で読むよりも,調べ学習をする段階を経て作品を読むことで,調べ学習で得た背景知識が読み手 の物語理解を助け,読みの楽しさへとつながっている。4 回のワークショップの題材となる『アリス』について参加者一人ひとりが予備知識を得ることを主なねらいとしてデザインされた調べ学習は,学生たちにとって,主体的で探求的な学びへのウォームアップともなっていたと考えられる。そして, 学生たちは自身が小学校教員になった際に,英語の授業に調べ学習や教材研究を取り入れることを以下のように提案している。
語の内容理解につながり,発表を終えたあとの達成感につながると思う(学生 12)
少しでも分かった状態で読んでいき演技をすることで,絵本に気持ちを寄せながら学べる(学生 5)
田中(2020)は,学んだ知識を活用したり,複数の資料を比較・関連づけて考えたり表現したりする ことが「深い学び」につながると述べているが,今回学生たちが行った「事前学習」としての調べ学習は,子どもの主体的な学びと英語絵本の物語内容への共感力や理解力を育て,発表を終えての「達成感」「やりがい」にもつながると,学生たちは自身の体験をとおして考えていることがわかる。
ドラマワークショップ開始時には「難しそう」という抵抗感があったことを 37 名中 11 名の学生が記述していたことは本項(1)で述べたが,小グループの活動の中で育まれた主体性と対話的な姿勢,
「事前学習」とワークショップにおける各活動の意味と連関性への気づきが主体的な学びを促し,や りがいや達成感につながり,結果として「楽しい」と感じる要因となったことがわかる。
本項では,学生たちが英語での発表が楽しかった・達成感につながったと思えた要因について検討する。
37 名中 17 名が発表の表現方法の「自由度」について述べている。
歌を歌ってみたり,小道具をつかって演じてみたりなど,様々な面で発表という形ができ,グループとして,個人として,満足いく形になった(学生 36)
上記の記述より,今までの英語の授業のなかでの発表といえば,教科書の一部の音読や,決まった文章の中で限られた部分のみ書き換えての発表であったことがわかる。一方,今回は,予め決められた ことを発話するというのではなく,「感情をこめるなどの他者に伝えることを大切にした発表」が初体験で「不安」や「戸惑い」はあったものの,英語のセリフや発表の形態も自分たちで考える自由と自主性が各グループに委ねられていることで,学生たち自身で創作する自由を楽しむこともでき「やりがい」につながったことがうかがえる。
自分たちのグループを含め,音源をつかったりペープサートを使ったりと多くの発表の仕方があり,4 つのグループどこも発表の仕方がかぶらなかった。私は英語を理解するのが苦手なので,発表もただ聞き流しているだけになりがちだが,今回の発表では,とても楽しくて本当にアリスの世界をのぞいているように感じて感動した(学生 18)
のグループがそれぞれこだわりをもって取り組んだからこそ,新たな学びを得ることができた。自分も教員になったら,児童が夢中になって取り組むことのできる活動を展開したいと心から思う
(学生 10)
英語への苦手意識が強い学生の場合でも,それぞれのグループが工夫する表現を観る楽しさに刺激され,英語での発表を興味をもって観て聞くことで,物語世界に惹き込まれている。また,各グループが「こだわりをもって取り組んだ」英語での発表をクラス全体で観合う楽しさだけでなく,学び合いのコミュニティが形成されていたことがうかがえる。
教員からのフィードバックに言及している記述は,37 名中 20 名と半数を超える。各グループが発表に向けて準備する様子を観察するなかで,教員は以下に示す 4 点を学生たちにフィードバックした。
どこに・何にフォーカスして発表するかを見極める
英語で分かり易く観ている人に伝える工夫をする
非言語でのコミュニケーションにも着目する
台本を作り込まない
以上 4 点のフィードバックのなかで特に 2)について,70%(20 名中 14 名)の学生が振り返りで言及している。本稿 2.3 で述べたように,The Nursery “Alice”は,書き手のルイス・キャロルが幼い聞き手に向けてアリスの冒険談を語り聞かせるストーリーテリングの文体で描かれている。「優れた文学を味わい鑑賞する」ことを,クリエイティブ・ドラマの活動による学びの機会のひとつとして McCaslin
(2006)は挙げているが,The Nursery “Alice”を「味わい鑑賞する」には作品の文体のもつ魅力にも意識を向ける必要があろう。そこで,ドラマの発表者たちには,観客であり物語の聞き手でもあるクラスメートたちに向けて,英語で分かり易く「伝える」こと,ルイス・キャロルが作品をとおして伝授しているストーリーテリングの方法を自分たちの発表にも適宜取り入れるなどして物語を聞き手に
「届かせる」ことに留意した発表をめざすことをフィードバックした。
4)については,本稿 2.2 で述べたように,前もって大まかなプランは立てても,からだの動きやせりふのやりとりなどの詳細は player に任されているのがクリエイティブ・ドラマの基本理念である
(Ward, 1957)。しかしながら,事前に大まかなプランだけ立て,発表は即興的に行うことが player に委ねられることは,外国語としての英語に苦手意識をもつ場合,英語での発表への抵抗感や不安感を助長しかねない。そこで,各グループ内で話し合いながら台本をある程度作ることは容認しつつも, 一言一句台本を丸暗記して発表に臨むのではなく,相手と対話を重ねるなかで自発的に生まれてくる言語および身振り手振り等の非言語でのやりとりも大切にするようフィードバックした。
(学生 27)
「英語で発表」と言われると,「一言一句間違えずに台本通り」言うことに意識が向きがちであることが学生たちの記述からうかがえる。しかし,実際に発表に臨んでみると,相手に伝えたい,届かせ
たいという気持ちをもち,声のトーンや表情といった非言語の要素を取り入れることで「より伝えた い状況が伝わりやすい」という気づきを学生は得ている。そして,即興で行うことは「きもちが込めやすい」「楽しさを感じる」,つまり即興に踏み出すことは,こころが動く体験となっていることがわかる。
教師からの 4 つのフィードバックを学生たちはどのように受けとめたのか,学生たちの振り返りを以下に引用してみる。
最初は英語での発表は難しそうで嫌だなと思うことがあったが,最終的には楽しいなと感じることが出来た。工夫をすることで相手に伝わるということの楽しさや素晴らしさを感じることができたのでいい経験になった(学生 35)
やってみると中学生の時に習ったような文法が使えることが多かった。セリフに使用する英語は,より簡単でわかりやすいもののほうが相手に伝わりやすく,演技をする際も感情や抑揚などをつけやすくなると感じた(学生 7)
上記から見えてくることは,まず,英語で伝える楽しさである。また,中学までの既習の文法が使えるという気づきがある。そして,物語の登場人物の役になってみることは,他者のおかれた状況やそのときの心情を自らに引きつけて想像し共感をもって理解し,その立場に立ってコミュニケーション を図ろうとする姿勢を生み出す。
「伝える」とは,相手にわかりやすい言葉やフレーズを選んだり,顔の表情や声のトーン,ジェスチャーといった非言語の側面にも意識を向けるだけでなく,相手に「伝えよう」「伝えたい」という強い意思と主体的な態度が肝要であるという認識を深めている。英語での発表を観る人にわかりやすく「伝える」「届かせる」という教師からのフィードバックは,学生たちの「学びに向かう力」を育むきっか けともなっていることが学生の振り返りの記述からわかる。
本ワークショップ後半で,各グループが 2 回発表を行うことを教員が助言している。その 2 回発表を行う体験について 75%(20 名中 15 名)の学生が言及している。ワークショップ 3 日目に各グループが 1 回目の発表を終えた後,クラスメートから受けたフィードバックを参考にして再度発表を行うことを教員が助言した。結果として,2 度の発表を行ったことは学生たちの達成感につながったことは 4.1 量的結果が示すとおりである。学生たちはその体験を以下のように振り返っている。
前回行った際の発表よりもより良くなっていて,たった 1 週間でこれほど発音や演技の工夫などが変わるのだなと感動した。2 回やることによって,実践的な場のなかで反省点を見つけられるとともに,他のグループの良い点を取り入れられると感じた(学生 7)
利点があり,2 回目の発表で,さらに前の発表よりも向上した内容をしていくことができるということがわかった(学生 4)
発表を 2 回行うことは,1 回目の振り返りを活かし改善すべきところは工夫をして内容を向上させる機会,他のグループの発表を観て良い点を学び取り入れられる機会となる気づきを得ている。そして, 1 回目よりも「より良いものにしよう」という協働的に学びに向かう力が生まれていることも記述からうかがえる。
各グループは,1 回目の発表の際,発表を観ているクラスメートたちから web 会議ツールのチャットを通じて多くのフィードバックを受け取った。その一部を以下に紹介する。
観客として発表を観たクラスメートたちは,言語と非言語による表現,即興性,小道具やオンライン 上の工夫等に至るまで,発表したグループの創意工夫や努力を知り理解して省察し(Siks, 1983)丁寧にフィードバックしていることがうかがえる。また,改善点として,「表情や抑揚をつけらえるともっと伝わりやすくなると思う」「感情をこめている人,こめきれていない人の差が少し気になる」という非言語に注目するフィードバックが多かった。学生たちは,クラスメートたちのこのようなフィード バックをどのように受けとめたのかについていくつか引用してみる。
演技が良い,ペープサートが味を出しているなど言ってもらい,やってよかったなと思い,またやりが いを感じた(学生 4)
個人として,またグループとして努力した点を,観客として発表を観たクラスメートたちに気づいて もらいその努力や工夫を評価してもらうことは,楽しさややりがい,自信につながったことがうかがえる。また,お互いに発表を観合いフィードバックし合うことによって,自分たちで気づかない部分について他者の客観的視点からフィードバックを得ることもあり,学び合いが生まれ,その重要性にも気づいている。
以上のことから,英語での発表が楽しくやりがいと達成感につながった要因として,発表の表現方
法の自由度の高さと,教員とクラスメートからのフィードバックがあることが明らかになった。フィ ードバックの重要性については,教師教育学の視点から Korthagen(2013)も説いている。Korthagenは,経験的学習の理想的なプロセスは,action(行動)とreflection(省察)のサイクルが続くことであ
るとし,そのプロセスを5 つの phase(段階)として提
示した。次の図 2 に見られる 5 つの phase それぞれの頭文字をとり ALACT モデルと呼ばれている。
この 5 つの phase のなかで phaseⒸにおける「重要な
図2 KorthagenのALACTモデル(2013, p.62)
Creating alternative methods of action
側面への気づき」の手助けとなるのがフィードバックであり,以下の点が効果的なフィードバックの基準・尺度に含まれている。
フィードバックは,その情報を受け手が活かす機会を提供するものでなければならない。
Awareness of
essential aspects
Trial Action
Looking back on the action
フィードバックは,その情報をもとに行動を変えるか否かを判断する自由を受け手に与えることが大切である。
今回のワークショップで,教員が学生たちに 2 回目の発表を行う助言をした時点というのは,図 2 の
モデルに照らしてみると,各グループが 1 回目の発表(phase①)を終え,発表を観たクラスメートた
ちから様々なフィードバックを受けた段階(phaseⒸ)といえよう。発表が 1 回で終わるとすれば, phase④「アクションの選択肢の拡大」を学生たちが考えても,それを試行してみる phase⑤には至らず,省察のサイクルとしても不完全である。フィードバックを「受け手が活かす機会」となるのが, 2 回目の発表(phase⑤)である。つまり,今回のドラマワークショップではフィードバックをもとに
「行動を変えるか否かを判断する自由」が受け手である各グループに任されている点で,Korthagen
(2013)が示す効果的なフィードバックの基準・尺度に即しているといえよう。さらに,Korthagen では,指導的立場にある者が1人の実習生に対してフィードバックを行うケースを中心に論じられているが,今回のワークショップでは,フィードバックを与えるのは教員だけでなく,発表を観た他のグ ループのクラスメートたちであり,その受け手はグループであることから,グループ間およびグルー プ内の協働的な省察が促される形態となっていると言えるであろう。
Korthagen(2013)はまた,phase②Ⓒにおいて,どこに問題があるか,学ばなければならないことはなにかに気づかせるだけでなく,受け手が自分の強みにも気づけるように手助けすることが大事であり,phase④では,その強みをさらに伸ばしていく可能性を探るステップとなり得ると論じている。英 語での発表について,達成感につながった要因のひとつとして,学生たちの強みに気づかせる仲間か らのフィードバックは自信を与え,phase⑤にあたる2 回目の発表を「より良いものにしようというみんなの心意気」(学生 9)につながることが振り返りの記述から明らかになった。
今回,原作を英語で読んだ体験について,楽しさ・やりがい・満足度いずれも 89.2%と高かった。記述においても,37 名中 15 名の学生たちが「楽しかった」と述べている。
読めた(学生 24)
英語で物語を読むという体験をしてきた学生は少なく,英語での新たな体験をしたことが新鮮であっ たことがうかがえる。上記の学生については,ARCS 動機づけの評価においてワークショップの活動も英語での発表もすべてネガティブな反応を示した唯一の学生であり,その理由として「英語を読む ことにいっぱいになっていてそれ以外のところに気が回らなかった」と記しているが,結果として原 作で読む体験を楽しめたことがうかがえる。
学生たちにとって The Nursery “Alice”は,トップ・ダウン的な読みのアプローチおよびボトム・アップ的な読みのアプローチを自主的に取りながら読み進めやすいテクストであったといえる。
『アリス』の物語をすでに日本語訳で読んだりディズニー映画で観たりした経験をもつ学生は,日本語版やディズニー作品と比較をしながら読む楽しさの気づきを得ている。Sipe(2008)は,教師による絵本の読み聞かせを聞くときに子どもたちが見せる反応を分類し,子どもの文学的理解力の発達の5 つの側面としてとらえている。その 5 つの中に,教師が読み聞かせたテクストを他のテクストと関連づける子どもの反応がある。Sipe の論に照らして言えば,ディズニー作品を知ったうえで『アリス』の原作を読むことは,テクスト間の比較を自立的に行うことを促し,両者の違いを楽しみながら文学 的理解力を育てる一助になると考えられる。
・これまで,ディズニーの『アリス』のアニメを日本語バージョンで見たことはあったが,原作を英語で読んでみると,「あのセリフは英語だとこんな風になるのか」という部分があった。原作を読むことで,ディズニーとは違った良さに触れることができた。自分の英語における学習力を更に向上していくことができたのではないかと感じ,これからも沢山の絵本などに触れていき理解していこう と思う(学生 23)
英語のテクストと日本語のテクストにおける表現の違いに着目しているこの振り返りの記述から,今回のドラマワークショップにおいて,英語の原作というテクストと日本語版のアニメ映画というテクストを比較する機会を得て,それぞれのテクストのもつ特色に気づくことにより,さらに英語絵本を自主的に読み込んでいこうという動機づけとなっていることがうかがえる。
以上見てきたように,題材を英語で読む体験を楽しいと感じやりがいを覚えた学生が多かったとは いえ,それによって「自信がついた」と思う学生は 62.1%にとどまっている。「自信がついたとはあま
り思わない」理由を記している学生は少ないが,「分からない単語ばかりだった」(学生 2)「英語を読むことが難しかったので,もっと読めるような人だったらこの活動はもっと楽しかっただろうなと思 う」(学生 16)という記述からは,語彙力の不足および読解のためのストラテジーを使えていないことが壁となっていたと考えられる。
本研究におけるドラマワークショップは,英語で読んだ文学作品について「ことば(外国語)とこころ,からだを通して表現し伝え合う」ことを目標に,発表の形態と,言語および非言語での表現を小グループで考え,2 度の発表に臨み,ワークショップの活動を振り返る構成で行われた。ワークショップ開始時には,英語に対する苦手意識から抵抗感のあった学生たちにとっても,グループワークの中で対話的な姿勢を育み,協働的に「作り上げる」(学生 6)プロセスを楽しみ,緊張しながらも助け合って英語での発表に臨み,「自分たちでもできるという成功体験」(学生 22)となり,結果としてワークショップ活動への満足感と達成感につながった。
本ワークショップの助走として,「事前学習」を行っているが,それまで英語で文学作品を読む体験のほぼ無い学生たちにとって,原作者に関する情報を収集して整理した内容を発表しクラス全体で情報を共有するステップを踏んだ上で作品を英語で読むことで,物語が「頭の中に入り」(学生 28)作品に「親しみやすく」(学生 20)なり,読み込んでいく楽しさが生まれた。さらに,読んだ作品の内容や魅力を伝えるべく英語で表現する発表を 2 度行ったが,教員とクラスメートからのフィードバックも参考にしながら行う省察的実践は,英語の「4 技能すべてを使った」「実践的な学び」(学生27, 1, 10)となり「英語学習の楽しさに気づく貴重な体験」(学生 22)となることがわかった。
総合的な学習の時間における資料の収集・分析後のまとめ・表現としては,ポスターセッションやパネルディスカッション,ものづくり,演劇・ミュージカルといった総合表現等,多様な事例が紹介されている(文部科学省,2021)。外国語活動および英語の授業における「話す」活動としてのやりとり・発表に関しても,本ワークショップのような「多様な表現方法を組み合わせて表現する」総合表現を取り入れた省察的実践の活動を取り入れることは,英語の実践的な学びとなるだけでなく,協働的に楽しく学び合う姿勢が育まれ深い学びにつながると考える。
小学校教員養成課程外国語(英語)コア・カリキュラムにある「外国語に関する専門的事項」では,
「授業実践に必要な英語力」と「英語に関する背景的な知識」を習得することが期待されている。学生たちが将来小学校教員になった際にも活用できるようなオーセンティックな児童文学の作品を取り入れ,「事前学習」を経て作品を英語で読み,作品の内容や魅力を多様な表現方法を組み合わせて英語で発表して観合い,そのプロセスにおいてフィードバックの仕方や活かし方も学ぶ活動は,専門的知識と英語の 4 技能を体験的に習得していくだけでなく深い学びにつながる統合的な活動となると考えられる。よって,「外国語に関する専門的事項」の授業に,児童文学の作品を通して体験的かつ省察的 に学ぶドラマワークショップを挿入することを提案する。
本研究は小学校英語教育学会の助成を得て行われたものである。課題研究委員会をはじめお世話になった諸先生方に心より感謝申し上げたい。
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