2023 Volume 23 Issue 01 Pages 36-51
羽田 あずさ(横須賀市立田戸小学校)
要旨
外国語やその背景にある文化を社会や世界,他者との関わりに着目して捉えることが外国語教育で育成するべき資質の一つ(文部科学省,2017a)とされ,これは相互文化的能力※1(以下 IC)と深く関連している。また,小学校外国語科において中心的教材は教科書であることから,本稿は,IC 要素に着目し,教科書の国際比較を通して日本の小学校外国語教育のための教育的示唆を得ることを目的とする。そのために「言語と文化の複元的アプローチのための参照枠(以下 FREPA)」(Candelier et al., 2012)の「知識」「態度」「スキル」の 3 つの能力について抽出した IC 要素を指標とし,フィンランド・韓国(各 1 種)・日本(2 種)の教科書の視覚資料・記述内容・題材・活動等が IC 要素の育成につながるかを分析した。すべての教科書で育成につながると考えられる IC 要素は,「知識」は 20 項目中 9 項目(特に規範・価値観,文化の多様性(下位文化の存在),自国について),「態度」は3 項目す
べて(好奇心・興味,肯定的受容,多様な社会で活動する願望・決意),「スキル」は 9 項目中 5 項目であった(特に,比較する(コミュニケーション),比較する(文化的現象),やり取りする(非言語))。全ての教科書で観察されなかった IC 要素やフィンランドの教科書でしか観察されない IC 要素もあった。これらの結果から,①規範・価値観について扱う言語教材の開発,②文化の提示の工夫(下位文 化の多様性も含む),③文化の共通性に目を向けさせる,他 4 項目の日本の教科書への提案について述べる。
外国語やその背景にある文化を,社会や世界,他者との関りに着目して捉えることが外国語で表現し伝え合うために必要であることが謳われている(文部科学省,2017a,p.67)。グローバル化が加速する現在,多様化する英語使用者やその価値観や相互依存の関係,脱中心化の視点や他者性(otherness)
(Byram,2008)へ配慮したコミュニケーション能力の育成が求められている。
また,異なる言語や社会的・文化的背景をもつ者との交流だけでなく,同じ言語や国家・コミュニ ティーに属する人々との間でも同様に,人と人が言語や非言語でつながり,より良いコミュニティー・国家を築き,より幸せに生きていくには IC が深く関わっている。IC は,既習の言語や自文化と,新たに学習する言語や文化の両者を仲介する(mediate)相互文化的話者(intercultural speakers)(Byram
& Zarate,1997)に関わる文化的能力(cultural competence)であり,4 つの要素で構成される(表 1)。
IC 育成に関わる外国語科の授業の中心的教材は教科書であろう。また,教科書を使用する指導者の意識が児童の IC 育成に大きくかかわる(藤原他,2017)ことを鑑み,本稿では,小学校外国語科の検定教科書で扱われる題材,内容,活動等が,児童の IC を促進する内容を含んでいるかについて分析を行うことで,指導者の教材理解や教材開発の能力を向上させるための示唆を得ることを目的とする。
表 1 相互文化的能力(IC)の定義(Byram,2021,pp.61-68;訳は筆者による)
相互文化的能力(IC) 定義
知識(Knowledge) ・自国及び相手国の社会集団とその産物や慣習に関する具体的な知識,および社会と個人の相互作用のプロセスに関する一般的な知識
態度(Attitudes) ・好奇心と開放性,異文化に対する不信感や自文化に対する信念を保留する心構え
・異文化の文書や出来事を解釈し,それを説明し,自文化の文書と関連付ける能力
スキル(Skills)
批判的文化的気づき/市民教育(Critical cultural awareness/ political education)
・文化的慣習に関する新しい知識を獲得し,即時的なコミュニケーションややり取
りの制約の下で知識,態度,スキルを運用する能力
・自国や他国の文化や価値観を明確かつ体系的な推論に基づき多角的に評価する能力
日本の中学校英語検定教科書では,従来の教科書に比べ登場する人物・国などの国際性が強まり, また日本に関する記述が大幅に増加している(長谷川,2016;印田,2010)。しかしその内容は,表層的であり(印田,2010),相手の視点に立つこと(他者性)が求められる活動や自文化と異文化の比較を行う内容はほとんどない(中山・栗原,2015)。文部科学省の小学校教材や小学校英語検定教科書の FREPA を用いた IC 要素についての分析では,異文化間の比較を促す活動や他者の視点が観察される
(中山,2017)と同時に,言語形式の学習内容が増加している(中山・栗原,2019;中山・栗原・清田,2021)ことが指摘された。
一方,フィンランドや韓国の教科書では言語能力を育む上で十分な語彙や文法を扱っていることが分かった(与那覇,2011;米崎・伊藤,2010)。言語能力と IC を共に育むための方法や意義について研究を進める必要性があること(中山・栗原,2019)やこれまで日本の小学校英語の検定教科書と諸外国との IC 要素を比較した研究は行われていないことから,IC 要素を分析指標とする諸外国の小学校英語教科書の比較は日本の外国語教育への示唆があると考える。
また,IC 要素を分析指標とする研究では文化的な題材のみに着目(中山,2017;中山・栗原,2015, 2019;中山・栗原・清田,2021)している。小学校外国語科の「知識及び技能」の目標「外国語の音声や文字,語彙,表現,文構造,言語の働きなどについて,日本語と外国語との違いに気付き,これらの知識を理解する」(文部科学省,2017a, p.69)ことや「言語は文化の主要な側面であるばかりでなく,様々な文化的表出に至る道であること」(Council of Europe,2001,p.5)を鑑み,音声面や文字体系などの言語面にも着目すれば,より多角的に日本の英語教育への示唆が得られると考える。
RQ1 日本とフィンランド・韓国の小学校英語教科書に含まれている内容・視覚資料・題材・活動等が,どのような相互文化的能力(IC)の育成につながるか。
RQ2 日本とフィンランド・韓国の小学校英語教科書に含まれている内容や視覚資料等では育成することにつながらない相互文化的能力(IC)にはどのようなものがあるか。
本稿では,フィンランド『Go for it ! 5,6』と韓国『ELEMENTARY SCHOOL ENGLISH 5,6』を分析した。両国は,異文化理解の観点からは異なる特徴を持つ。韓国は,英語運用能力の重要性を強調した上で国際的視野を養うことも重要とし(文部科学省,2005),フィンランドは,外国語教育を多言語・多文化理解という大きな枠組みの中で捉え(矢田,2021),他者を尊重し相互文化的能力を育成することを強調している(Finnish National Agency for Education,2016)。韓国は異文化理解を中心とした内容であるのに対し,フィンランドは異文化に対するスキルや態度の育成を目指している。
日本の小学校外国語科の英語教科書は,2 種『NEW HORIZON Elementary 5,6』と『ONE WORLD Smiles 5,6』を分析した。『NEW HORIZON Elementary』は,採択率の高さと,各単元末に異文化や自文化に関する内容があることが特徴である。『ONE WORLD Smiles』は,単元の中の活動で異文化や自文化に関する内容を扱っているという特徴がある。加えて,筆者の勤務する市で採択されている教科書であるため活用の仕方が具体的に分かるという利点から選択した。
表 2 各教科書の特徴と配当時数(ページ数は第 6 学年の教科書)
国(作成・検定) 教育課程 教科書名 ページ数 単元数 単元構成 時数
フィンランド
(民間・無)
2016 年
告示
Go for it! 175(ワードリスト52 頁含む)
5 トピックシラバス
2 時間/週
以上(45 分)
韓国
(民間・有)
2015 年
告示
ELEMENTARY SCHOOL ENGLISH NEW
175(ワードリス 13
トなし)
96(ワードリス
場面シラバス
102 時間/年
(40 分)
日本 2017 年
HORIZON
トなし) 8 場面
70 時間/年
Elementary
(民間・有)
告示 ONE WORLD
Smiles
134(ワードリス 9
ト6 頁含む)
シラバス
(45 分)
分析の指標には,FREPA[A Framework of Reference for Pluralistic Approaches to Languages and Cultures]
を用いた。まず FREPA の IC 要素 534 項目※2 のうち,初等教育でおおよそ導入可能とされるレベル
「Preprimary」「Primary 1」「Primary 2」(対象年齢は不明。(中山・栗原・清田, 2021)を参照)から, さらに「必須(essential)」に分類される IC 要素を取り出し,「知識(Knowledge)」46 項目,「態度(Attitudes)」
5 項目,「スキル(Skills)」29 項目,合計 80 項目の IC 要素を抽出した。
次に,各国の第 5 学年と第 6 学年の教科書(合計 8 冊,表紙・ワードリストや絵カード・ワークシートを除く)について,それぞれの記述内容・視覚資料・題材・活動等が抽出した IC 要素の育成につながるかについて検討した。フィンランドと韓国の教科書については,教科書誌面のみを分析(原語 で記載されている指示文などについては Google のカメラ翻訳を用いて内容を理解)した。日本の教科
書 2 種については,教科書だけの分析では視覚資料に頼るしかなく情報が限定的なため,教師用指導書の音声スクリプトも参考にした。なお,複数の IC 要素の育成につながると考えられる場合はそのすべての IC 要素に分類した。
そして,類似または同義と捉えられる IC 要素については項目を統合して「大項目」とし,IC 要素を要約して「具体的内容」として表した。また,教科書の記述内容・視覚資料・題材・活動等を分類する際の特記事項を※印で記した(表 3・4・5)。なお,分析は筆者のみで行った。
表 3 知識(Knowledge)の指標
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表 4 態度(Attitudes)の指標
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表 5 スキル(Skills)の指標
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各教科書の内容等で育成することにつながる IC 要素とその具体例について,「知識(Knowledge)」
(表 6),「態度(Attitudes)」(表 7),「スキル(Skills)」(表 8)ごとに表で示す。フィンランドの教科書は「フ」,韓国の教科書は「韓」,日本の教科書2種はそれぞれの名前の頭文字(『NEW HORIZON Elementary』: N, 『ONE WORLD Smiles』: O)で表した。
IC 要素については「大項目」のみで表している。その IC 要素の育成につながる内容が教科書に含まれている場合は●印で示した。「具体例」には,教科書に含まれる内容・視覚資料・題材・活動等を国または教科書ごとに示した。重複する内容等については数か国まとめて示している。
RQ1 日本とフィンランド・韓国の小学校英語教科書に含まれている内容等が,どのような相互文化的能力(IC)の育成につながるかについての結果と考察について述べる。
表 6 「知識(Knowledge)」おける各教科書で育成することにつながる IC 要素と具体例
IC 要素の大項目 |
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すべての教科書で育成することができると考えられる IC は 9 項目,「言語の多様性」「音声」「書記法」「社会的言語状況」「近隣国について」「自国について」「文化の多様性(類似・差異)」「文化の多様性(優劣がないこと)」「文化の多様性(下位文化の存在)」であった。
全体的な特徴として,どの教科書でも多様な国・人種の登場人物が扱われていることが,言語や文化の多様性を知る上で有効だと考える。その中でも特に興味深いのがフィンランドの教科書における
「文化の多様性(下位文化の存在)」である。一つの国の中に存在する少数民族の言語や文化や,題材 とする国の中で複数の都市が扱われていた。少数民族について学ぶことは,単一で言語や文化が存在
すると捉えがちな国家という枠組みからの脱却に寄与するのではないだろうか。また,題材とする国の中で複数の都市を扱うことは,その国内での多様性を示し,国としてのイメージを固定化する傾向を捉え直すことに寄与すると考える。
同様に「文化の多様性(下位文化の存在)」において興味深いのは,日本の教科書 2 種の内容等である。どちらも多様な県・地域の名所や名物を扱っている。その中のいくつかは(例えば東日本と西日 本で餅の形が違うことなど)は,自国・自文化への気づきも促すことにつながると考える。
また,どの教科書においても「音声」「書記法」に関わる内容は十分に扱われており,英語独自の音声や英文を書く際のルールを知るという点で言語の習得に寄与すると考える。さらに,英語以外の言語の書記形態(文字)もどの教科書でも扱われている。フィンランドは,スウェーデン語・フランス語・中国語,韓国はベトナム語とハワイの言語,日本はフランス語・ロシア語・中国語(N),スペイン語・ビルマ語・フィンランド語・タイ語・ルーマニア語(O)を扱っており,自言語や英語との違いにも気づくきっかけになり多様性をより感じられるだろう。
どの教科書でも「自国について」を扱っているが,その中でも特に興味深いのは日本の教科書で, 外国人から見た日本・日本文化を扱っている。『NEW HORIZON Elementary』では,日本に住む外国人の仕事の話,ある国で人気のある日本食の話,外国人旅行者が日本を訪れる目的,『ONE WORLD Smiles』では,外国人の好きではない日本食,外国人が行ってみたい都道府県,外国人が食べてみたい日本食, 見たい祭り,したいことなどが取り上げられている。これは,自己中心性を脱して客観的な思考を得 る,つまり脱中心化につながると考える。
次に,「規範・価値観」はフィンランド・韓国・日本(N)の3 種の教科書の内容において育成につながると考えられる IC である。フィンランドの教科書では,同じジェスチャーが国によって異なる意味を持つことや「メーデー」という記念日の重要性が国によって異なること,韓国の教科書では,他国で許可を求めるべき行動や許可を求める英語表現を知ること,日本(N)では,6 か国におけるその国の大切なものを扱っている。これらは,多様化する価値観や他者を理解することに寄与するのではないか。
最後に,フィンランドの教科書のみにおいて育成につながると考えられる IC については,「言語の多様性(複言語の状況)」「言語の進化」「文化に対する解釈・ステレオタイプ」「文化の接触・影響」
「文化とアイデンティティ」「文化の習得・学習」の 5 項目がある。2 つの点で韓国と日本にはない要素が含まれている。
らこそ,このような場面を扱うことを通して,アイデンティティをもつことや主張することを考える きっかけにすることができるであろう。また,同じ場面で,カナダ人の登場人物が自身を”I’m French Canadian.”と表現している。これは,人間は 1 つの言語や国家の枠組みではなく複数の言語や文化に関連してアイデンティティをもつ,ということを知ることにつながると考える。
表 7 「態度(Attitudes)」における各教科書で育成することにつながる IC 要素と具体例
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全ての教科書において,「好奇心・興味」「肯定的受容」「願望・決意」3 つ全ての IC 要素を育成することにつながる内容や活動が含まれていた。
まず「好奇心・興味」を喚起することについては,内容と活動という点で国によって大きな特徴がある。フィンランドは,主に「読む」活動を通して好奇心・興味を喚起するものであった。内容は多岐に渡り,他国の学生や有名な物についての内容やコミュニケーションの方法の変遷・歴史・文学・ 伝説などが扱われている。日本は,他国の小学生について(自己紹介・学校生活など)の「話を聞く」, 他国の有名な物(食べ物・祭り・名所など)の「話を聞く」というもので,「聞く」活動を通して,世界への好奇心・興味を喚起する内容になっている。韓国については,日本と同様の内容ではあるが「聞く」活動と「読む」活動において育成可能であると考えられる。
「好奇心・興味」を喚起する内容で特に興味深いことが 3 つある。1 つ目は,『NEW HORIZON Elementary』の「海外で活躍する日本人についての話」である。海外で活躍する有名な日本人について の話は,児童にとって世界をより身近に感じることができるものにつながるのではないだろうか。2 つ目は,『ONE WORLD Smiles』の「他国の地図記号を比べる活動」である。日本では鳥居を表す記号がアメリカではピクニックエリアを表す記号と似ていることやドイツの郵便局を表す記号が日本のもの とは異なることを知ることは新たな発見であり,さらに他国のものを調べてみたいという興味につな がるのではないだろうか。3 つ目は,フィンランドの「コミュニケーションの方法の変遷(古代ローマ・南北アメリカ・ヨーロッパなど)」や「中国のアイスクリームの歴史の話」である。これらは空間 的位置づけだけでなく時間的位置づけが加わり,言語や文化についてより深い好奇心や興味を促すものになると考える。
次に「肯定的受容」を促すことについて考える。3 か国において共通するのは,会話の中で話し手の発言に対して肯定的なリアクションをする内容である。そのリアクションの種類は多岐に渡り,相 手の発言に対する”Me, too!” ,” Sounds nice!” ,” That’s great!” (フ・韓・N・O)や,日本で活躍する
外国人に対しインタビュアーの” You are cool!” ,” You can do it!” (N)や,自己紹介をして” Let’s be friends.” “Sure!” というやり取り(O)がある。これらは,実際のコミュニケーションにおいて,他者と接する際のロールモデルになるのではないだろうか。これらの会話は,主に「聞く活動」で扱われ ている。
また,フィンランドと韓国の教科書には読む活動において「肯定的受容」を促すことにつながる内容が含まれている。フィンランドは「デンマーク人のデザイナーが多様な文化から洋服のデザインの アイディアを得る」という内容である。これは,多様な文化の中で違いを楽しみ新しいものを生み出す者,つまり「社会の中で能動的に行動する者(social agents)」(Council of Europe,2001,p.9)の姿の一例であると捉えることができる。韓国は,「Funny Hair Day(面白い髪形で登校する日)を間違えてSchool Picture Day(写真撮影の日)にオレンジと青の髪色で登校した登場人物に対し,クラスメイトが手元にある文房具で面白い髪形にしてみんなで写真を撮る」という内容である。異質なものや他者の間違いに対し,排除するのではなく肯定的に受け入れるという他者へ配慮する姿であろう。これら も児童の「肯定的受容」の態度の育成を促すロールモデルになると考える。
最後に「言語的・文化的多様性の中で活動する願望・決意」を促すことについては,日本と韓国で同じような特徴が観察された。どちらも自国・自文化を紹介する内容と,行きたい国やそこでしたいことを伝えたり書いたりする活動を通して育成することにつながると考えられる。フィンランドは, 読むこと中心の活動であるが,内容は多岐にわたる。その中でも特に興味深いのは,登場人物がケニヤのある村で橋を作る内容のマンガや診療所で看護を手伝っている話を読むことである。これらは, 国際貢献を行う者の姿を描いていると受け取れる。このような姿を見ることは,児童にとって自分の世界を広げ,将来こうした地球的な文脈中で主体的に活動するきっかけを与えることにつながるのではないだろうか。
表 8 「スキル(Skills)」における各教科書で育成することにつながる IC 要素と具体例
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【フ】音声聞き取り,やりとり,読解,クイズに答える【韓・N・O】動画視 聴・音声聞き取り,やり取り,発表,自国の文化紹介,ポスター作りなど |
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【フ】フィンランド語と英語のどちらを使ってほしいか尋ねる会話のロール プレイ【O】英語表記やピクトグラムやイラストを見てジェスチャーで表現 |
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【韓・N・O】お店などでの丁寧な注文の仕方のロールプレイをする【フ】英 語かフィンランド語のどちらを使ってほしいか丁寧に尋ねるロールプレイ |
全ての教科書において育成可能であると考えられる IC 要素が 5 項目,「比較する(音声)」「比較する(書記形式)」「比較する(文化的現象)」「知識・技能を活用する」「やり取りする(社会的言語)」 であった。韓国と日本の活動内容には近似性がみられた。
「比較する(音声)」「比較する(書記形式)」について,韓国と日本は自言語と英語における音声や書記形式(文字)の比較を「聞く」「書く」活動を通して行うものであり,自言語と英語の近似性や隔たりに気付くことにつながっている。また,日本の教科書における「聞く」活動は,英語と日本語の音の違い,文字や文を書く時のルールを明示的な指示のもと比較させる活動であり,これは指導者にとっても児童にとっても取り組みやすい活動になっていると考えられる。
「比較する(文化的現象)」に関しては,韓国と日本の両国で扱われている内容は児童にとって身近 な「学校生活」についてであり,「違いを考える」活動で比較するというスキルを促している。特に, 韓国の教科書で観察された「アメリカの遊びを韓国の遊びに例える」という活動は,ただ比較するだけでなく共通点を見つけるという視点を得ることにつながると考える。
「知識・技能を活用する」「やりとりをする(社会的言語)」については,韓国と日本の両国の教科書において,ほぼ同一の内容と活動において育成につながると考えられる。英語の動画視聴・音声聞き取り,英語でやり取りや発表を行う,ポスター作りを行うことを通して「知識・技能を活用する」 スキルを促している。そして,お店などでの丁寧な注文の仕方のロールプレイを通して,場面に応じた言語使用「やり取りをする(社会的言語)」スキルの育成を促すと考えられる。
これらのスキルは,どの教科書においても育成可能であると考えられるが,フィンランドの教科書にみられる全体的な特徴がある。韓国と日本は,比較する言語が自言語と英語であるのに対し,フィンランドは自言語と英語の比較に加え,自言語と英語以外の言語や英語と他言語の比較というように多様な比較を行っている。また,フィンランドの教科書における特徴的な点は,言語や文化に関する クイズが多数含まれていることである。既知の文化や経験を基にクイズに答えることで「知識・技能を活用する」スキルを育成することにつながっていると考える。
3 か国の教科書で扱われている内容で,非常に興味深いと感じたのは「手話」や「ハンドサイン」を扱ったものである。フィンランドの教科書では「ハンドサインと絵文字の意味を考える」という活動,韓国の教科書では「韓国とアメリカ・イギリスの手話を比較する」という活動があり,これらは
「比較する(コミュニケーション)」スキルを育成することにつながる活動だと考えられる。日本の教 科書(O)では「アメリカの手話をやってみる」という活動があり,これは「やり取りする(複言語・非言語)」スキルを育成することにつながる活動だと考える。
韓国と日本の教科書において扱われていた内容に,アルファベットの音や文字がある。これらは「比較する(異言語内の音声と書記)」スキルを育成することにつながると考えられる。韓国と日本の教科書では「外国人の名前のつづり方をアルファベットで聞いたり書いたりする」「アルファベットや英語の音声を聞いて文字や単語を選ぶ」「発音を聞いて初頭文字を識別したり書いたりする」活動を通して育成につながると考えられる。
RQ2 日本とフィンランド・韓国の小学校英語教科書に含まれている内容等では育成することにつながらない相互文化的能力(IC)にはどのようなものがあるかについて述べる。
「知識(Knowledge)」:「語族」「ストラテジー」「級友の文化」この3 項目については,すべての教科書において育成につながる内容や視覚資料等は観察できなかった。「語族」については,Primary レベルで導入可能とされているが,認知的な発達段階や学習指導要領に示されている内容などを鑑みた際に,教科書の内容として取り扱うことが難しいのではないかと考える。「ストラテジー」と「級友の 文化」については,教科書の内容や活動を学習することを「通して」得られる知識であり,それ自体の知識が教科書の内容として「取り扱われる」ものではないのではないだろうか。学習の過程において得られる知識だと考える。
また「スキル(Skills)」:「識別する」についてもすべての教科書において育成につながる内容や視覚資料等は観察できなかった。その具体的内容は「言語学的な様々な指標から,様々な起源をもつ語を識別することができる」というものであるが,前出の「語族」同様に,認知的な発達段階や指導内容として取り扱うことが難しいのではないかと予想される。
「知識(Knowledge)」:「借用語」の知識を育成する内容や活動等は,フィンランドと韓国の教科書では観察されなかった。これは,両国とも英語学習の開始学年が第 3 学年(フィンランドは学校裁量
で第 1 学年から)であることから,「借用語」に関する知識については下学年において扱われているのかもしれない。
「知識(Knowledge)」:「言語の多様性(複言語/複言語主義の状況)」「言語の進化」「文化に対する解釈・ステレオタイプ」「文化の接触」「文化とアイデンティティ」「文化の習得・学習」この 6 項目については,韓国と日本の教科書において育成につながる内容や視覚資料等は観察できなかった。逆に言えば,フィンランドの教科書にだけ,育成につながる内容等が含まれていることになる。
これは,フィンランドの社会的状況や教科書の特徴に理由があると考える。フィンランドを含むヨーロッパ諸国は,ボーダーレスで複言語・複文化的状況にあると言える。そのような基盤があれば, 他国の複言語状況や文化の接触・影響についても理解が進みやすいと考える。
また,フィンランドの教科書の特徴として,記述文の多さがある。ダイアローグや読み物としてこ れら IC 要素に関わる内容を取り入れていた。韓国と日本の教科書は,全体的に視覚資料が多く観察される。韓国の教科書には,すべての単元の最後に読み物があるが,その単元に関連した言語材料や表現を取り入れた内容である。日本の教科書に関しては,全体的に「聞くこと」「話すこと」に関する視覚資料中心ということもあり,今の時点では読み物教材として取り入れることは難しいと考える。
「スキル(Skills)」:「比較する(異言語内の音声と書記)」のスキルにつながる内容や活動は,フィンランドの教科書では扱われていなかった。韓国と日本ではアルファベットの文字と音を対応させることや,音声を聞いて文字や単語を選ぶという活動が行われるのだが,フィンランドではすでに下学年で履修済みということが考えられる。
「スキル(Skills)」:「比較する(文法)」「やりとりする(複言語・非言語)」これら 2 項目の育成につながる内容等が,韓国の教科書では観察されなかった。考えられる理由としては,「比較する(文法)」 に関して下学年の履修,そして「やりとり(複言語・非言語)」に関しては複言語環境にないことや教科書の構成があげられる。特に教科書の構成の影響は大きいと考える。全体的な構成が英語の機能や使い方を学習する内容で,異文化や他言語に関する内容は”World and Us”という単元の最後の 4 分の 1 ページのスペースで扱われている。
日本の教科書だけで,育成につながる内容等が観察されなかった IC 要素はなかった。しかし,2 種
類のうち一方のみでしか育成につながる内容等が観察されなかった IC 要素は「知識(Knowledge)」:
「規範・価値観」,「スキル(Skills)」:「比較する(コミュニケーション)」「やりとりする(複言語・非言語)」の 3 項目である。これらについては,次章「教育的示唆」として述べる。
IC 要素「規範・価値観」を育成することにつながる内容については,NEW HORIZON Elementary 5 において「食事のマナー:音を立ててすすることなど/中国・インドなど」(p.61)と NEW HORIZON Elementary 6 において「大切な物」(p.20)が日本語の読み物として画像と共に紹介されている。他国の文化や価値観を児童が知ることは,多様な視点を得ることになり脱中心化につながると考える。ただこれらの内容は,日本語の読み物として扱われているので,英語の言語材料や表現を用いた教材として扱われることが,児童の英語運用能力を育成する上でも有効だと考える。例えば,「食事のマナー」であれば Small Talk として”What would you like?“(N),”I’d like a pizza."(O),”Welcome to Japan”(N)で教材化することができるだろう。
また,韓国の教科書では第 5 学年 Lesson3:Can I Take a Picture? (pp.32-43)という単元の中で「他国で許可を求めるべき行動」として扱われている。ここで用いられる英語表現”Can I~?” は,日本の中学校英語教科書では第 1 学年で扱われる。先に述べたように,韓国の英語教育が日本より 20 年以上前に導入されたことを鑑みると,将来的には日本でも小学校で扱われる言語材料となることも考えられるのではないか。
IC 要素「文化の多様性(下位文化の存在)」につながる内容については,日本の教科書の中では日本国内の各県の名所や名物などが十分に扱われており,IC 要素「自国について」においても有効だと考える。しかし,他国を扱う際には児童の認知度の高そうな名所や名物が扱われていて,言語や文化的現象を国家という枠組みでとらえる視点や,その国に対するステレオタイプを生みかねない。
フィンランドの教科書でも多様な国が扱われているが,インドの「ニューデリー」と「ポンディチ ェリ」のように一つの国の中の複数の都市が扱われている。日本の教科書において,多様な国を扱お うとすると,一つの国の中の複数の都市を扱うことは難しいかもしれない。しかし,国名だけでなく具体的な都市名を伴って提示することで,その国全体のイメージの固定化,つまりステレオタイプからの脱却に寄与するのではないか。
国連教育科学文化機関(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization: ユネスコ)は,世界の約 2500 の言語が消滅危機に晒されていると発表した。その中で,次の日本の 8 つの言語(北海道のアイヌ語,東京都八丈島の八丈語,琉球諸島の奄美語,国頭語,おきなわ語,宮古語,八重山語,与那国語)が危機言語リストに加えられた(UNESCO,2009)。自分たちの住む国にもこのような
多言語・多文化状況があることを知ることで,他国の多言語・多文化状況についての理解の助けになるのではないかと考える。例えば,自己紹介で北海道出身の登場人物が”I’m from Hokkaido. I can speak Ainu.”と伝える場面を視聴することで,児童の気づきを促すことができるかもしれない。
フィンランドの教科書では,イギリスやカナダなどをはじめとする様々な国の多言語・多文化状況を扱っていた。また,自国の少数民族であるサーミ族についても扱っていた。日本国内における多言 語・多文化状況,例えばアイヌ語やアイヌ民族などを扱うことは,自国についての理解の促進にもな ると同時に,他国の多言語・多文化状況は特別なことではなく,どこにでもありうることであるとい う認識を助けるのではないか。また,言語や文化を国家の枠組みで見る認知の偏りからの脱却にも貢献するのではないかと考える。
しかし,この内容を教材化する際に基礎的な地理や日本の歴史に関する知識などが必要になるだろ う。そのため社会科や道徳などの他教科と関連させて扱われることが望ましいと考える。
IC 要素「肯定的受容」の育成につながる内容としては,日本の教科書では会話の中でのリアクションの言葉”You are cool!/ You can do it! / Wow! That’s a nice idea!” などがあげられる。これらの表現は, 児童にとって他者を肯定的に受容する際のロールモデルとして有効だと考える。さらに,他者のネガ ティブな面や自分とは異なるものに対してどのような態度をとるかというロールモデルも扱われると よいのではないか。
先述したが,韓国の教科書では,「Funny Hair Day」という英語の読み物教材が扱われている。この教材での登場人物の言動は,異質なものや他者の間違いに対し,排除するのではなく肯定的に受け入れるというロールモデルになるであろう。例えば,新学習指導要領対応小学校外国語教材 We Can! 1 指導編(文部科学省,2017b,pp.50-51)には,音楽が好きだがピアノが弾けないという登場人物の発言に対し,”That’s O.K. I can’t sing well, but I like music very much.” と反応する場面がある。他者のネガティブな情報に対し,「それでいい」と反応するという姿も児童にとっては他者や異質なものを受け入れるというロールモデルになると考える。
これらのことから,これからの検定教科書の内容を考える際に,できないことや嫌いなものを伝え たり何か間違えたりした場面で”That’s O.K.”, “Never mind.” (大丈夫/気にしないで)などを伝えるロールモデルを提示するとよいのではないだろうか。
IC 要素「好奇心・興味」を喚起することにつながる読み物や話を聞く活動は,3 か国全教科書において観察される。また IC 要素「願望・決意」を促すことにつながる内容については,フィンランドは登場人物が多言語・多文化環境で活動する読み物などがあり,韓国と日本は自国・自文化の紹介や行きたい国やそこでしたいことを伝える活動などがあった。
読んだり聞いたりする活動や自分の願望を伝える活動は充実しているが,学習指導要領との関連に おいて「ものの見方や考え方を養う」という点でその先の活動を提案したい。「あなたはどう考える?」 という問いを与え,他者と意見交換することによって,児童は自分の意見を批判的に再考し新しい見
方や考え方を再構築するきっかけをつかむであろう。このような活動が,他者性や脱中心化や物事を多面的に見るという,ものの見方や考え方につながり,他者性に配慮した IC の育成にも寄与するのではないだろうか。
IC 要素「比較(コミュニケーション)」「やり取りする(複言語・非言語)」スキルを育成することにつながる活動として,日本の教科書において手話やハンドサイン・ジェスチャーを扱うことを提案す る。手話は話し言葉としてのコミュニケーション機能を果たすものであり,言語のひとつとしてその 能力(Signing Competences)が CEFR Companion volume(Council of Europe,2020)に導入された。
フィンランドの教科書では,諸外国のジェスチャーの意味を考える活動,韓国の教科書では韓国と アメリカ・イギリスの手話を比較する活動がある。日本においては『ONE WORLD Smiles 5』でアメリカの手話が扱われている(p.91)。国による手話やハンドサイン・ジェスチャーの意味の違い(例:What’s this hand sign in Japan?)を比較したり,手話やハンドサイン・ジェスチャーを用いてやり取りをしたりすることを通して,他者理解や他者にわかりやすく伝える工夫を考えることにつながるのではないか。
IC 要素「比較する」というスキルを育成することにつながる内容や活動は,日本の教科書にも韓国, フィンランドの教科書にも含まれている。その中で韓国の教科書に含まれる内容「アメリカの遊びを 韓国の遊びに例える」は,違いに目を向けるだけでなく共通性にも目を向けさせるという点で他者や 異なるものへの接し方として有効だと考える。
音声や書記形式,文化的現象など様々な要素があるが,それぞれの要素における相違の中にも近似性や共通性があると考えられる。日本の教科書において比較を行う活動を含む場合,ただ違いを見つけるという活動ではなく,共通性に目を向けさせる設問や活動があるとよいのではないか。例えば,
『ONE WORLD Smiles 6』 Lesson 7 の聞く活動(アメリカは 3 月に卒業式がある)に,付加情報として他国の卒業式が何月に行われるかについても聞かせると「日本と韓国が3 月で同じ,フランスとイ
ギリスは 9 月で同じである。地理的な近さが関係しているのだろうか」という気づきを生むかもしれない。このようなものの見方や考え方は,外国語やその背景にある文化を捉え,コミュニケーションを行う際の思考力や判断力を育成することにつながると考える。
研究の結果や考察を踏まえ,3 点,今後の課題としてあげたい。
まずは,量的な分析についてである。今回の研究では内容等に着目をした分析であり,その分量については考慮していない。どのくらい扱われているかの分量について分析することで,教科書の全体 構成やカリキュラム内での扱い方に関する示唆を与えることができるかもしれない。また,分析は筆 者一人で行った。そのため,分析の視点の偏りや見落としの可能性も考えられる。IC の背景知識を持ち,かつ日本の外国語教育事情に明るい分析者と共にトライアンギュレーションをかけることによっ
て分析の精度が増しただろう。最後は,具体的な教材や活動等の提示である。今後,言語の習得の過 程における教材で,児童にとって IC を育成することに貢献しうる具体的な教材や活動を提示すれば, 指導者が活用し,児童の IC 育成に貢献するのではないだろうか。
1.「異文化間能力」という訳語もあるが,Byram(2008)の細川(2015)の訳語「相互文化的能力」を用いる。
2 .翻訳は FREPA のウェブサイト (https://carap.ecml.at/CARAPinEurope/tabid/3045/language/en- GB/Default.aspx)から取得できるものを用いた。科研費助成研究「多言語・多文化教材の開発による学校と地域の連携構築に向けた総合的研究」(23330245, 代表:山西優二)の一環として行われたも の で あ り , 大 山 万 容 , 加 藤 由 崇 , 黒 川 悠 輔 に よ る も の で あ る
(https://carap.ecml.at/Portals/11/documents/CARAP_descriptors_JP_final.pdf)。
本研究の遂行にあたり,専門的知識を基にあらゆる局面で多大なご指導を賜った,東京学芸大学阿部始子准教授に深謝いたします。並びに研究の着想,教科書選定においてご助言くださった東京学芸大学粕谷恭子教授,馬場哲生教授に感謝いたします。
フィンランドの教育に関する様々な情報を提供してくださったフィンランド国立教育研究所
(University of Jyväskylä, Finland)矢田匠氏,日本及び諸外国の教科書に関する有益な助言をしてくださった文部科学省初等中等教育局教科書調査官池田勝久氏,教科書分析の指標について貴重な情報を提供してくださった文教大学准教授中山夏恵氏に厚くお礼申し上げます。
Byram, M. (2008). From foreign language education for intercultural citizenship: Essays and reflections. Multilingual Matters. 〔バイラム著『相互文化的能力を育む外国語教育-グローバル時代の市民性形成を目指して-』細川英雄監修(2015), 大修館書店〕
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