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2023 Volume 23 Issue 01 Pages 99-114

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俣野 知里(京都市立二条城北小学校) 泉 惠美子(関西学院大学)

キーワード:探究的実践,専科教員,ICT活用

要旨

小学校外国語専科教員に関する調査では,多様な背景をもつ専科教員の存在や,専門性の高い専科教員による指導が一定の効果を上げていると捉えられていることが明らかになり,専科教員の重要性が増す一方,専科教員の孤立感や研修の在り方が課題として指摘されている(俣野・泉,2020;俣 野,2021)。本研究では,専科教員を対象とした研修の在り方について示唆を得ることを目的とし,研究課題「ICT を活用した探究的実践(Exploratory Practice:以下,EP)は,外国語専科教員にどのような影響を与えるのか」を設定し,約半年間,6 道府県の公立小学校の外国語専科教員 6 名の協力を得て ICT を活用した EP を試みた。協力者は自身の授業の様子等から問いを設定し,探究の過程をチームコミュニケーションツールにて日常的にメンバーと共有し,6 名の協力者と 2 名の研究者による月 1 回程度の同時双方向によるオンライン交流会を通して,互いにコメントや助言などを行った。結果,EP の過程を通じて 6 名の協力者が自らの考えを言語化し,メンバーと協働的対話を重ねることで一つの共同体へと変容する様子が見られた。なかでも,ICT の活用により,異なる地域に住むメンバーと時間や場所を越えて意見交流や情報交換をすることが可能となり,互いの考えを認め合いながら新たな気付きを得たり,自らの問いについてより深く考察したりする等,多忙な中でも持続可能な 取組について示唆を得た。ICT を活用した EP は,勤務校が異なってもオンライン上での記述や対話を通じて同僚性や協働性が構築され,各自の指導の充実や成長に資する可能性が示された。

はじめに

近年,小学校外国語教育の指導者は多様化してきている(文部科学省,2022)。2018 年には,学校における働き方改革等の一環として全国に段階的に専科教員が配置されるとともに,各自治体や学校独自の専科教員制度を設けている学校も増えている。専科教員による指導の充実等,そのよさが認識 される一方で,専科教員に対する研修が十分になされていない現状が課題として認識されている場合もある(例えば,俣野・泉,2021)。本研究は,専科教員に関するこれまでの調査結果を踏まえ(俣野・泉,2021;俣野・泉,2022;俣野,2022),専科教員を対象とした研修の在り方について示唆を得ることを目的として行った,ICT を活用した EP の試みについて報告する。

  1. 2.   先行研究
    1.    小学校外国語教育における専科教員を取り巻く現状

小学校外国語教育においては,学級担任が外国語の授業を担当する割合が減少し,専科教員などが担当する割合が増加し(文部科学省,2020),「令和 3 年度英語教育実施状況調査」では,外国語教

育を担当する教師 160,273 人のうち,学級担任は 94,484 人(58.95%),当該小学校所属の専科教師等

は 38,686 人(24.14%)となっている(文部科学省,2022)。教科としての外国語を実施する高学年に

おける外国語教育担当教師は 81,340 人にのぼり,学級担任が 41,610 人(51.16%),当該小学校所属の

専科教師等 22,384 人(27.52%)と続き,授業交換等で他学級において外国語教育を担う教師も増加している(文部科学省,2022)。

外国語教育を担当する専科教員は,学級担任とは異なり,現状では,各校の事情によってさまざまな経緯や条件のもと外国語活動や外国語の授業を担当しており(俣野・泉,2021; 俣野,2022),勤務条件によって担当しなければならない授業時間数が決まっている場合等,他教科とは異なる制度上 の制約がある場合もあり,課題も指摘されている(例えば,寺沢,2020)。そこで,専科教員の現状と認識について検討するため,俣野・泉(2021)では,専科教員を対象としたオンライン質問紙調査を行い,専科教員が指導するよさとして指導の充実や外国語教育への専念,課題として時間不足や各学級に応じた指導,他教員との連携などが認識されていることを明らかにした。さらに,専科教員が 現状をどのように捉えているかをより詳細に明らかにするため,専科教員を対象にオンライングループインタビュー調査を実施した(俣野・泉,2022)。課題として,同僚との連携,実態が異なる学級への対応,児童との関係構築の難しさなどが明らかになり,俣野・泉(2021)と類似する傾向が見られた。バトラー後藤(2005)は,韓国において,学級担任の方が一人一人の英語力や習得状況の把握がしやすいなどの理由から,専科教員が担任を希望し,担任になるケースが出てきたことを報告して おり,学級担任制が主流である日本においても共通する点があると考えられる。また,課題への対応として,協力者全員から種々の連携に関する言及が見られ,これまで以上にさまざまな視点からの連携が多くの教職員の間で必要になっていることも明らかになった。しかしながら,多忙を極める教育現場においては,わずかな情報共有でさえ十分に行えない場合もあり,教職員間で効果的に連携を図 るための,現状に即した持続可能な仕組みを検討することが大変重要であることも明らかになった。 さらに,願いとして,他教員との協働や研修の充実が複数の教員から挙げられた。

これらの調査から明らかになった,時間の不足や教員間の連携,他教員の理解等,専科教員単独では改善が難しい課題も多いことを踏まえ(俣野・泉,2021;俣野・泉,2022;ELEC 教員研修部, 2021),俣野(2022)では,管理職や行政の外国語教育担当者を対象としたオンライン質問紙調査・オンラインインタビュー調査を行い,学校や自治体の運営を担う立場から見た現状や認識について検討した。専科教員制度の成果として専科教員による指導の充実が挙げられた一方,勤務条件に起因する課題については校内で改善策を見出すことが難しい状況も報告された。また,複数の自治体においては,専科教員の指導の充実につなげるべく,専科教員の孤立感の軽減を主な目的とした情報交換の機会が設定されており,校内に同じ立場の教員が少ない専科教員同士が互いに交流を求めるニーズ

(俣野・泉,2021; 俣野・泉,2022)にも合致していると考えられる。またその形態も対面だけに限らず,オンラインを活用する等の工夫が見られ,ICT を活用した専科教員同士の交流や研修は,時間

や場所を超えて同僚性を高め,指導の充実につながる一つの方法として可能性を秘めていることが示された。

探究的実践(EP)

俣野・泉(2021)において,現状の認識に関わる質問を行ったところ,「授業内容や指導法について校内で研修を受ける機会がない」という回答の平均値が全質問項目の中で最も高い結果となった。また,専科教員が効果的に授業を行うための措置については,「国や自治体が,専科教員を増やす」の平均値が最も高く,「自治体や勤務校が,専科教員が対面で参加できる自治体研修や校内研修を主催する」,「国や自治体が,専科教員のための研修を主催する」が続いた。このような状況を踏まえ, 専科教員を対象とした教員研修の在り方を検討することは,急務である。しかしながら,教員研修については,これまでよりその重要性が認識されながらも,多忙や時間の不足等により十分になされて いない現状がある(俣野・泉,2020)。そこで,現状に即した教師の成長につながる仕組みとして, EP を用いた教員研修の可能性を検討したい。

EP は,研究と教育学を統合する実践者研究の独自のかたちとして,近年,注目を集めており

(Hanks, 2017),研究と実践の乖離を回避し,探究と実践の循環を目指すものとされている。EP は, “A way of getting teaching and learning done so that the teachers and the learners simultaneously develop their own understanding of what they are doing as learners and teachers (Allwright, 2006: 15). ”と定義され,EP の中心となる 7 つの原則が次のように示されている(Allwright & Hanks, 2009)。

EP は,研究と実践の「パズル(問い)が生まれる」,「共同的な実践の研究」,「理解の深化」の 3

つの過程から成り,理解の深化を目的とする(大学英語教育学会ら,2020)。7 つの原則は,現状の多忙な教育現場における教員研修において重要な視点であると考えられる。そこで,本研究では,小学校外国語教育における専科教員を対象とした研修の在り方について示唆を得ることを目的とし,研究課題「ICT を活用した EP は,外国語専科教員にどのような影響を与えるのか」を設定した。

なお,本研究では,学級担任となっていない学級において外国語教育を担当している指導者(専科教師,授業交換で同学年他学級・異学年他学級を指導している学級担任,教務などを含む)を総称して「専科教員」と呼ぶ。

  1. 3.   研究方法
    1.    協力者

協力者は,6 道府県の公立小学校の専科教員 6 名である。各教員の属性は,表 1 の通りである。教員 B は,小中一貫校に勤務しており,中学生の指導と併せて,小学校第 6 学年児童の指導を担当している。また,教員 D は複数校を兼務する専科教員で,各校の校内研究等の事情により担当する学年は第 1~6 学年とさまざまであった。その他の教員は,第 3~6 学年の指導を担当している。協力者の勤務年数は,5~17 年で,外国語教育の経験年数は,2~17 年であった。

表 1 協力者の属性

教員

担当学年(年)

勤務年数(年)

外国語教育経験年数(年)

A

3~6

16

12

B

6

5

5

C

3~6

17

17

D

1~6

16

9

E

3~6

16

10

F

3~6

15

2

  1. 2.   方法
    1.    EP の概要

2021 年 10 月~2022 年 3 月にかけて,ICT を活用した EP を行った。EP には,6 名の専科教員と著者らが参加した。協力者である 6 名の専科教員は,第 1 回のオンライン交流会にて自己紹介を行い,EP についての説明を著者らから聞いた後,各自のパズルを設定して EP に取り組んだ。また,互いの EP の過程を Zoom によるオンライン交流会(表 2)やチームコミュニケーションツール Slack への書き込みにより交流した。Slack については,今回初めて利用する協力者もいたため,初回のオリエンテーションの際に全員で使用方法を確認し,その後利用を開始した。なお,オンライン交流会の様子は 動画で記録し,参加できなかった教員が後日視聴することで,共通理解を図った。また,Slack には, 全体のチャンネルと各教員のチャンネルを作り,自身のチャンネルに EP の記録を残したり,互いのチャンネルへ書き込んだりできるようにした。

なお,本研究の実施に先立ち,研究の趣旨,ならびに,①本研究への参加は任意で,参加しない場合も不利益を受けることはないこと,②同意はいつでも撤回できること,③オンライン交流会の様子は,欠席者との情報共有や内容の正確な理解のため録画されること,④録画を拒否できること,⑤ 個人情報は匿名化され適切に管理されることについて文書と口頭で協力者に説明し,文書で参加の同意を得た。

表 2

オンライン交流会(全 6 回)の概要と参加者

日 主な内容

参加者

1

2021 年 10 月 30 日(土) オリエンテーション

教員 B,C,D,E,F

2

2021 年 11 月 13 日(土) パズル(問い)の共有

教員 A,B,C,D,E,F

3

2021 年 12 月 29 日(水) 進捗の報告

教員 A,B,C,D,E,F

4

2022 年 2 月 4 日(金) 進捗の報告

教員 A,B,C,D,E

5

2022 年 3 月 4 日(金) 進捗の報告

教員 A,C,D,F

6

2022 年 3 月 31 日(木) まとめ(報告)

教員 A,B,C,D,E

EP に関するオンライン質問紙調査

EP 終了後の 2022 年 6 月~7 月にかけてオンライン質問紙調査を実施し,研究課題について検討した。質問は,(1)属性(所属・担当・勤務年数・外国語教育経験年数・外国語教育に関わる経歴),

(2)EP で設定したパズル,(3)パズル設定の理由,(4)パズルを探究する過程で考えたり感じたり したこと,(5)EP に取り組む中で,自身の「理解」について考えたり感じたりしたこと,(6)Slack を通じたメンバーとのオンラインでの交流について考えたり感じたりしたこと,(7)Zoom を通じた メンバーとのオンライン交流会について考えたり感じたりしたこと,(8)EP の持続可能性について 考えたり感じたりしたこと,(9)EP に取り組んでよかったと思うか。また,それはなぜか。(10)今 後,EP に取り組んでみようと思うか。また,それはなぜか。(11)EP に関して「課題」や「改善点」であると感じたこと(任意),(12)EP の運営面についての感想や意見の 12 項目を設定した。本稿で は,質問項目(1)~(7)について,特に(6),(7)を中心に扱う。

分析

研究課題について明らかにするため,質問項目(6),(7)にて得られた自由記述のデータを KJ 法により分析した。また,より詳細な影響について検討するため,教員 E のオンライン交流会での語りに焦点を当て,ウド(2018)を参考に質的内容分析を行った。教員 E の全発話は,メイン・カテゴリー(「勤務校の現状や近況の報告」,「実践に関する反省」,「実践に関する模索」,「パズル設定の理由」.「実践内容の紹介」,「メンバーからの学び」)に沿って分類するコーディングを行った。なお, コーディングに関する質を保証するため,2 名の著者がそれぞれのコーディング結果をもとに議論をし,最適なコーディングについて検討した。

結果及び考察

6 名の専科教員が今回の EP で設定したパズルとその設定理由は,表 3 の通りである。なお,パズルや設定理由については,協力者の記述をそのまま引用している。本項では,研究課題について多角的に検討するため,専科教員 6 名を対象とした EP に関するオンライン質問紙調査の結果と教員 E のEP の記録に分けて報告する。なお,教員 E は,勤務年数,外国語教育経験年数ともに協力者の中間層に位置したため,6 名の協力者の代表的な例として取り上げることとする。

表 3 6 名の専科教員のパズルと設定理由

教員 パズル 設定理由

  1.   

    なぜ,児童の言語活動が活発にならないのか~目的・場面・状況の具体的を探る~

意味のある言語活動とは何か,既習表現を使える活動にするにはどうしたらよいかを知りたい と思った。

  1. B.  

    なぜ,児童は型にはまったスピーチにとどまってしまうのか。

既習表現が定着しておらず,それを活用する力に課題を感じたから。また,児童の振り返りから自己調整(次はもっとこうしたい等)の深ま りが見られなかったため。

  1. C.  

    なぜ専科教員と学級担任は指導観に関わって意見が一致しないことがあるのか。中学校では教科担任と学級担任で指導観が違うときでもどうにかして局面を打開できたが, 小学校ではなぜ困難なのか(子どもにマイナスの影響はないのだろうか)。

この問いの解決に迫ることができれば,より一層の授業改善や学習改善につながりそうに感じたから。

  1. D.  

    なぜ,能動的な姿が大切なのか?

〜受け身にならない子ども達を目指して〜

伝えたい,知りたい,考えたい,学びたい。子ども達の学びに向かう姿には,「〜たい」の能動的な姿が必要不可欠であると考える。

  1. E.  

    なぜ子ども達は主体的に学べるのか 子ども達は「主体的」に学ぶためには,何が必

要なのか。評価基準を共有することが子ども達の主体性を育む一つの手段になるのではないか と考えた。

  1. F.  

    なぜ児童の主体的に学習に取り組む態度が育たないのか

私の授業の中で,児童は決められたことには一生懸命取り組むことができるが,自己を振り返ってより良くしようとするような主体的に学習 に取り組む態度が十分育てられていないと考えたから。

EP に関するオンライン質問紙調査

まず,EP に関するオンライン質問紙調査における質問項目(6)「Slack を通じたメンバーとの交流 で感じたことや考えたこと」,次に(7)「Zoom を通じたメンバーとの交流で感じたことや考えたこと」について報告する。

Slack を用いたメンバーとの交流について

質問項目(6)「Slack を通じたメンバーとの交流で感じたことや考えたこと」に関しては,6 カテゴリー(11 コード)が抽出された(表4)。

表 4 「Slack を通じたメンバーとの交流で感じたことや考えたこと」(6 カテゴリー・11 コード*)カテゴリー n

  1.    メンバーの書き込みによる新たな情報や視点の獲得 4
  2.    メンバー同士の意見交流 2
  3.    写真等を含む情報の共有・活用 2
  4.    課題の共通性の認識と考えの深まり 1
  5.    自身の指導記録の把握 1
  6.    自身の所属自治体での実施可能性 1

*コードとは,協力者の発話にタグや名称を付けるためのツールである。

最も記述が多かったのは,「メンバーの書き込みによる新たな情報や視点の獲得(n=4)」で,複数の教員が次のように回答している。

B:他の先生方の実践から,自らの実践を振り返る視点を頂くことができ,大変勉強になりました。

C:参加者それぞれが課題の解決を目指して実践している様子を知ることができ,大変刺激を受け,勇気づけられた(専科教員の立場ゆえに,専科同士で活発に交流する機会がなかなかないので)。

D:全国各地の実践を共有することで,新たな視点で考えることができ大変学び深い時間であった。

外国語教育においては,他の教科で行われているような同僚性を基盤にした教師同士の学びが行われにくいことや(中村,2016),専科教員に外国語教育が一任される場合もあることから(俣野・泉,2021),これらの回答は,校内で同様の立場の同僚が少ない専科教員にとって,新たな情報や視点を得る機会が貴重なものであることを示唆している。また,教員 C のように自分と同様に他の専科教員も課題解決に向かって取り組んでいること知ることが,孤独感の軽減につながっていることも推察される。

また,「メンバー同士の意見交流(n=2)」に関しても,「互いにコメントし合える点もよいと思います。(教員 A)」,「同じ専科と言う立場で,さまざまな観点から意見交流できたのは大きな学びとなった。(教員 E)」との回答があり,Slack への書き込みを読み合うことで,互いの思いや考えを交流できる点が評価されていた。

さらに,「写真等を含む情報の共有・活用(n=2)」に関わり,「写真やファイルなどを手軽に共有できたことから,すぐに日頃の授業実践に取り入れ参考にさせて頂くことができました。(教員 B)」

との回答もあった。Slack では,文字での投稿以外に写真や PowerPoint のスライド,pdf 資料等を共有することができる。教材や振り返りシートなどの写真やデータを容易に共有でき,文字からだけでは十分に読み取りにくい具体的な情報を視覚的に得ることができるため,他者の実践からの学びを自身

の実践へすぐに反映することにつながったと考えられる。加えて,「自身の指導記録の把握(n=1)」

に関わり,教員 A は,「継続的な取組が見れるので,後で自分の指導に活かしたい時に過去の投稿を簡単に見返すことができる点がよいと感じました。」と述べており,Slack をデジタルポートフォリオのように活用していたことがわかる。また,教員 E からは,Slack 上の記録を読み合うことで,「どの学校も同じようなことで課題を抱えていることもわかった。その上で,課題とどう向き合っていくの かも考えさせられた。」との報告もあり,「課題の共通性の認識と考えの深まり(n=1)」につながったと考えられる。このように,限られた時間の中でも他校の実践について詳細な情報を得ることができたり,自身の指導の記録を容易に残したりすることができる点は,ICT を活用するよさの一つであると考えられる。

加えて,教員 E は,「自身の所属自治体での実施可能性(n=1)」にも言及しており,「他のメンバーの実践は刺激となるので,このような会が市内においても開催されたら,外国語教育ももっと発展 すると思った。」と述べており,本研究での試みを肯定的に捉えていると考えられる。

Zoom を用いたメンバーとの交流について

「Zoom を通じたメンバーとの交流で感じたことや考えたこと」については,8 カテゴリー(15 コード)が抽出された(表5)。

表 5 「Zoom を通じたメンバーとの交流で感じたことや考えたこと」(8 カテゴリー・15 コード)カテゴリー n

  1.    メンバーとの対話による新たな情報や視点の獲得 5
  2.    メンバー同士の励ましや共感 2
  3.    専門家の関わり 2
  4.    メンバーの人数 2
  5.    孤立感の軽減 1
  6.    場所を越えたコミュニケーション 1
  7.    忌憚のない意見交流 1
  8.    今後への期待 1

最も言及の多かった「メンバーとの対話による新たな情報や視点の獲得(n=5)」については,先 述の Slack 上での交流でも評価されていた点であり,「様々な状況下で指導されている方の工夫が知れてよかったです。(教員 A)」や「Zoom を通した対話を通して,自分の実践を多様な視点から振り 返ることができました。(教員 B)」などの意見が聞かれた。また,教員 C は,「Zoom の場合,参加 者同士がビデオで繋がることができるので,そこでリアルタイムのやり取りができたのがよかった。」 とし,Slack とは異なる同時双方向型のコミュニケーションを図ることができる点がよさとして認識されていた。

また,「メンバー同士の励ましや共感(n=2)」については,教員 C と F が次のように回答している。

C:励ましたり,励まされたり,共感したり,考えたりすることができて,心強く感じた。F:指導で上手くいかないことについて共感していただいたり,うまくいった事例などを教え

ていただくことができ,大変参考になりました。

どちらの教員もメンバー同士の共感や励まし等について言及しており,Zoom による同時双方向型のコミュニケーションに満足していると推察される。また,Zoom を用いるよさに関わり,「日本各地の先生方と手軽にコミュニケーションをとれるのは,Zoom の醍醐味だと思う。(教員 E)」との記述もあり,ICT を活用することで,「場所を越えたコミュニケーション(n=1)」の実現につながっている。さらに,教員 E は,「専門家の関わり(n=1)」においても,「専門家である I 先生にも入っていただける機会が多く取れたのも,Zoom を通して行ったからだと思う。」と回答している。さらには,

「英語専科の立場は,コロナ禍は関係なく,1 人仕事であり,職場の中でも孤立しがちで相談相手がいないことが多いので,忙しくてもオンライン交流会があったことはよかったです。(教員 A)」との 回答もあり,ICT を活用した EP が「孤立感の軽減(n=1)」につながった可能性が示唆された。教師 の専門家としての学びと成長において,教師は一人では学び成長しないことから,専門家の学びの共 同体が最も重要かつ不可欠であるとされており(佐藤,2015),本研究のように ICT を活用した EP は,場所や時間を越えてメンバー同士が互いを励まし合ったり,専門家からの助言をもらったりすること ができることから,探究的実践者としての共同体の実現に寄与する可能性を秘めていると考えられる。

さらに,「少人数だからこそ,一人一人が発言しやすいし,議論もしやすいと感じた。(教員 E)」や「非公式(?)で自主的な研究会の場ということから,より忌憚のない意見交換ができたように感じました。(教員 B)」との回答もあり,「メンバーの人数(n=1)」や「忌憚のない意見交流(n=1)」ができるかどうかという視点も重要であることが示唆された。

最後に,「今後への期待(n=1)」に関わり,「ふらっとまたこのような機会ができると嬉しい。(教員 D)」との回答もあり,気軽に参加できるような機会であれば,多忙な教員にとっても肯定的に捉えられる可能性があると推察される。

  1. 2.   ➓員E のEP
    1.    ➓員E のEP の概要

教員 E は,子ども達が「主体的」に学ぶためには何が必要なのか,評価基準を共有することが子ども達の主体性を育む一つの手段になるのではないかと考え,パズル「なぜ子ども達は主体的に学べるのか」を設定した。

表 6 の通り,2021 年 10 月 30 日~2022 年 3 月 31 日かけて,オンライン交流会に参加したり Slack へ書き込んだりして EP の過程をメンバーと交流していた。なお,2022 年 3 月 4 日の第 5 回のオンライン交流会については参加予定であったが,急用により欠席となったため,後日,オンライン交流会の様子を記録した動画を共有した。

表 6 教員 E のオンライン交流会への参加や Slack への書き込み日 内容

2021 年 10 月 30 日 第 1 回交流会(オリエンテーション)

2021 年 11 月 13 日 第 2 回交流会(パズル(問い)の共有)

2021 年 11 月 13 日 Slack への書き込み1(自身のチャンネルへの書き込み)

2021 年 11 月 25 日 Slack への書き込み2(自身のチャンネルへの書き込み)

2021 年 12 月 13 日 Slack への書き込み3(自身のチャンネルへの書き込み)

2021 年 12 月 13 日 Slack への書き込み4(自身のチャンネルへの書き込み)

2021 年 12 月 13 日 Slack への書き込み5(自身のチャンネルへの書き込み)

2021 年 12 月 29 日 第 3 回交流会(進捗の報告)

2022 年 2 月 4 日 第 4 回交流会(進捗の報告)

2022 年 2 月 8 日 Slack への書き込み6(自身のチャンネルへの書き込み)

2022 年 2 月 14 日 Slack への書き込み7(教員 D のチャンネルへの書き込み)

2022 年 2 月 14 日 Slack への書き込み7(自身のチャンネルへの書き込み)

2022 年 2 月 14 日 Slack への書き込み8(自身のチャンネルへの書き込み)

(2022 年 3 月 4 日) (第 5 回交流会)※欠席のため後日動画を共有 2022 年 3 月 31 日 第 6 回交流会(最終報告)

2022 年 3 月 31 日 Slack への書き込み9(自身のチャンネルへの書き込み)

教員E の語り

教員 E のオンライン交流会における語りを分析した結果,表 7 に示す 6 つのカテゴリーが抽出された。それぞれの交流会において,次のようなカテゴリーへの言及があった(表7)。

表 7 オンライン交流会における教員 E の語り

カテゴリー(〇は言及があったことを示す)

回 オンライン交流会の

内容

勤務校の現状や近況の

実践に関する反省

実践に関する模索

パズル設定の理由

実践内容の紹介

メンバーからの学び

第 1 回のオンライン交流会では,自己紹介や EP の説明を行った。教員 E は,勤務校の実態や自身の現状について語る中で,「実践に関する反省」を次のように述べている。括弧内は,第一著者によ る加筆を示す。

E:今回,英語で指導要領が変わって,改めて私自身が学ばせて頂いてる中で,子ども達の学ぶ力を高めるためには子ども達自身が何で B をもらったのか,どうしたら僕はもしかしてA になれるかもしれないっていうことまでちゃんとアドバイスをしてあげることで,主体的な力が付くんだなっていうことで。なんかもう以前は,こういう(振り返りの)書き方をしたらいいよなんてあまりこう言ってあげられてなかったなって。

また,振り返りに関して,今の自分ができることやできないこと,悩んでいることややりたいこと等,具体的な内容を示して記述するよう指導する中で児童の記述が変容してきたことを報告し,どうすればさらに児童の力が伸びるのかについてより具体的な指導をしていかないとならないのではと模索中であると語った。これらの反省や模索から生まれた問いが,教員 E のパズル設定につながっていると考えられる。

第 2 回の交流会では,各自のパズルとその設定理由を交流した。教員 E は,「なぜ子ども達は主体的に学べるのか」というパズルを設定し,その理由について次のように述べている。

E:今ちょっと私自身で授業実践の中で意識しているのが,評価基準を子ども達となるべくしっかりと共有するっていうことをちょっと意識して授業を進めてるんですけれど。やっぱり,ちょっと主体的っていうところが新指導要領になって改めて見直された中で,子ども達が,ただただ,はいはい手を挙げるじゃないですとか,そういうことを理解していこうということで。振り返りをきちんと読み取って子ども達がどのようにしたら自分が向上できるのかっていうこと,自分をメタ認知して,次どういう風に向かっていくかっていうことを自分たちが考えられるために,評価基準をきちんと共有しなければ,子ども達の主体性っていうのは生まれないんじゃないかと思ったので,ちょっと主体的に学べるのかっていうパズルにしてみたんですが。

その後,第 3 回の交流会までに,複数回 Slack に実践の様子等を書き込んだり,資料を共有したり しており(表 6),12 月 13 日の投稿に対して,教員 D より「お疲れ様でした。素敵すぎる資料添付 も!早速参考にさせてください!私も自治体の指導力実践研修に参加させていただいていて,評価には悩みまくりです。子ども達との評価ルーブリック共有にまた新たな視点でチャレンジしてみます!」 とのコメントを受け取っている。

第 3 回,4 回の交流会では,EP の進捗について各自が報告した。第 3 回には,「実践の模索」に関わり,教員 E から次のような出来事が語られた。

E:Slack の方にあげさせていただいたんですけれども(12 月 13 日の投稿を指す),先日自治体の研修の方で実践発表する場があったので発表したところ,専門家の先生にご意見を頂いて,私ももう 1 回考え直したことがあるのでそのことについてお話をさせてもらいます。子ども達は,こういう評価だったらっていう,例えば,書くところで,今までこの単元で習ったことをきちっと使えたら B だよって,合格ねっていうふうに子ども達には伝えて,

さらにどうしたら評価が良くなるのって子ども達聞いてくるので,今まで習ったことをその場面や状況に応じてきちんとこう引き出してきて使えたら,「よくできる」なんだよっていう風に,結構具体的に示唆してきたんですけれども。その例も研修会で実践発表としてあげさせて頂いたところ,それも一つの方法ではあるけれども,まあもしかして子どもが成績を上げることに対してそこが目的になってしまうんじゃないかという課題が生まれてきたので,それについて私も少し考えて。

その後,教員 E は,これまでの実践を振り返り,評価の共有によって児童の目的が必ずしも評価を上げることになってしまわないように思うが,評価に関して児童に示す際の声掛けや程度について難しさを感じていることをメンバーに吐露した。さらに,教員 A が評価基準を共有する際の指導者の声掛けの影響について語ったことを受け,次のように述べている。

E:今まで私が評価をする時に子どもに本当に与えるだけだったことをすごい去年とか反省をしてて。本当,A 先生仰ったみたいに,評価をちゃんと伝えて子どもがどこに向かっているか教えてあげないと,こっちが評価をどうしているか教えてあげないとっていう気持ちでやってきたところ,今日,今,お話し聞いて,あっと思って。やっぱり目的,場面,状況っていうのがすごい大事っていうことなので,そこのバランスって言うか。やっぱりこっち(目的,場面,状況の設定を指す)を持って来たらこっちに重きを置いたら自然と A に向かう子が出てくるということなのかなってすごく感じたので,こういう視点も与えながら,やっぱり,目的,場面,状況をきちんと設定してあげることが大事なのかなって, 今改めて思いました。ありがとうございます。

この日は,これまでの回にはなかった「メンバーからの学び」についての言及がみられ,他のメ ンバーとの関係性が徐々に変化してきていることが推察された。さらに,第 4 回になると,他のメンバーの語りを踏まえ,自身の経験と重ねた言及が複数回聞かれるようになった。例えば,教員 C のEP の進捗に関する報告を聞いた後,教員 E は次のようにコメントしている。

E:なんかこう気になることばっかり目つけてしまって指導してしまうよりも,なんかこう今日はこの子がすごい頑張りましたとかそういう面を持ってなるべく先生にコミュニケーションをとるようにしてあげた方が子ども達にもいいのかなってちょっと考えた所だったので。まずは,こうやって C 先生みたいに良いところを報告と言うか,いろんな情報を担任の先生に,英語の時の子どもの顔,私もちょっとこう伝えることを努力してみようかなと思いました。ありがとうございました。

また,その後も,Slack で紹介された教員 A の実践を見たことや同じような教材を使用していること等に関する言及があり,さらに,模索中の実践について語る際には,「先程の C 先生のお話ともすごくかぶるんですけれども」等と他のメンバーとの共通点についてもふれている。

その後,教員 E の報告に対する他のメンバーからのコメントを受け,次のような声が聞かれた。

E:ありがとうございます。いや本当,実は夢だけの単元だと苦しいっていうのもあって。全部ひっくるめたのもあるんです。[…]先生方のお話を聞いて納得っていう感じで。はい。もうちょっと最後まで達成できるように頑張ります。ありがとうございます。

併せて,他のメンバーがパフォーマンステストに関しての悩みを語った際には,コメントとして次のように自身の悩みを共有している。

E:私もちょっとどうやってしようかなって悩み中なんですが,端末を家に持って帰って録音すると多分作り込んで来る子がいるだろうなっていうのがあって。どういう風に使えるかなって。[…]悩んでますので何か良いアイデアがあったらまた教えていただきたいです。

そして,最終回となる第 6 回は,各自の EP について最終報告を行った。教員 E は,EP の過程で取り組んだ 6 つの実践(実践①めあての提示と振り返り,実践②コミュニケーションスキルの具体的な提示,実践③態度面の評価,実践④ルーブリックの共有,実践⑤子どものアイデアを活かす,⑥教科書の枠を超えて)について報告した。実践④と⑤に関する語りからは,これまでのメンバーからのアドバイスや学びを自身の実践に反映させようと試みた様子が推察される。

E:前回お話しさせて頂いた時にも先生方にアドバイス貰ったんですけれども,これ(自作のルーブリックを指す)ばかりを目安にしてしまって目的,場面,その辺の意識が薄れてしまったっていう反省もありました。

E:先生方とこの EP でお話をさせていただいた後に,子ども達と授業した時に,目的意識というところ,もう少し私も,結構,評価に重きを置いてしまっていたので,目的意識を持たせるところが,あの薄くなっていたので,子ども達のアイデアだとか,子ども達がもっとやりたいという授業は何だろうって考えた時に,例えば What would you like?のところで自分たちでメニューを考えてそれをロールプレイで売ったり買ったりっていうやり取りをしたんですけれども。何とか学習目標を自分がやりたいことにどういう風につなげていくかというところで,さっきあの A 先生のサブタイトルというところが,同じなのかなと思ったんですけれども。自分達はこうしたいんだって言うのが学習目標に繋がるように,私たちは教科書ベース,教科書を使うってことで教科書を教えるんじゃなくって,教科書で教えるって事で,子ども達の主体性をはぐくむ設定を私達はしないといけないと思って意識して授業をしてみました。

さらに,第 6 学年の児童を対象とした実践から既習表現の定着の重要性を課題として認識したことに言及し,自身が担当した中学年での指導を振り返り,「定着度は,もうちょっと上を目指さないといけなかったのかなって反省しながら,こんなこと(既習表現の活用を指す)が最終的にはできるようになれたらなって思って,次は頑張るぞと思っています。」と述べている。そして最後に,教員 E

は約半年にわたる EP を振り返り,次のように締めくくった。

E:EP に参加して,本当に他府県の実践とか状況を知ることができてとっても刺激になりました。何よりも自分の実践を一回振り返ってみるっていうチャンスをいただけたので,先程メタ認知ってありましたけれども,自分はそこまで分析はできてないんですけれども,そういうチャンスをいただけたことがありがたいなと思いました。そして他の先生方の実践を見るとああ私も頑張らなくっちゃってすごく思ったので,それもまたとっても良い刺激を受けました。本当に先生方,そしてみなさんのアドバイスを受けることができて大変貴重な経験をさせていただき感謝しています。ありがとうございました。

住本ら(2020)は,教員の成長を促した要因や経験に関する知見について分析した結果,「同僚性」と「省察経験」が検出されたことを明らかにしており,教員 E の EP の過程から,同僚性や省察経験 に関する記述や語りが複数確認されたことからも,ICT を活用した EP の試みが教師の成長に影響を与えた可能性が示唆される。

研究課題についてのまとめ

本研究では,6 名の公立小学校に勤務する専科教員を対象に約半年に渡る ICT を活用した EP を試み,研究課題「ICT を活用した EP は,外国語専科教員にどのような影響を与えるのか」について検討した。協力者は,自身の実践や現状を踏まえてパズルを設定し,パズルについて探究する過程をSlack やZoom を用いてメンバーと共有するとともに,互いにコメントや助言などを行った。

オンライン質問紙調査から,メンバー同士の Slack への書き込みや Zoom での対話により,互いに新たな情報や視点を得たことが明らかになった。Slack 上での交流については,コメントだけでなく写真や教材が共有されることで,実践のイメージが具体的に共有され,すぐに自身の実践に生かすことができたとの意見もあった。また,Zoom を用いたオンライン交流会では,同時双方向型のコミュニケーションが可能になり,新たな視点の共有だけでなく,互いに共感したり励まし合ったりできた ことが肯定的に評価された。また,教員 E の EP の過程からは,約半年に渡る EP を通じて,メンバーと協働的対話を重ねることで自己開示が進む様子が見て取れ,実践への反省や模索を繰り返しなが ら,メンバーに学び,自身のパズルに関して理解を深化させていったと推察される。

本研究で試みた,ICT を活用した EP では,Slack や Zoom を用いたことで,時間や場所を越えてメンバー同士が意見交流や情報交換をすることが可能となり,多忙な中でも持続可能な取組について示唆を得ることができた。また,同じ専科教員であり,学校の同僚でない分,気軽に話せたり,共感もしやすいといった声も聞かれ,立場が似ていることから,経験の共有とより深い理解が可能になると考えられる。EP の過程の中でも,互いの考えを認め合いながら,新たな気付きを得たり,自らの問いについてより深く考察したりする様子が見られたことから,勤務校が異なってもオンライン上での 記述や対話を通じて同僚性や協働性が構築され,各自の指導の充実や成長に資する可能性が示された。

さらに,各自が省察を繰り返し,積極的かつ探究的に実践に関わる中で,認知的・行動的・感情的エンゲージメント(Reeve, 2012)が増大すると共に,指導が充実してくることによる高揚感,満足

感,達成感が得られ,教員としてのウエルビーイング(well-being)が生まれる可能性がある。なお, 本研究では,研究者 2 名の役割分担(担任の経験もある小学校外国語専科教員がファシリテーター, 英語教育専門の大学教員がメンター)が機能し,EP の組織づくりができたことも成果につながった と考えられる。EP を通して探究の過程と成果や課題を共有する中で,教師の成長と変容が見られ, 協力者の明るい笑顔や教員としての「生活の質」の改善が見られたことは,更なる教師の自律や自信 にもつながる。本研究のように,EP に ICT を活用することで学校外での協働的同僚性(第 2 の同僚性)を樹立することが可能になり,小学校外国語専科教員の研修の一つとして大きな可能性を秘めていると考える。

今後の課題

本研究では,校内に同じ立場の同僚が少ない外国語専科教員を対象とした新たな教員研修の在り方について示唆を得ることを目的とし,Slack や Zoom を活用した EP を試み,外国語専科教員に与える影響の一端を明らかにすることができた。しかしながら,ICT を活用した EP において,実施形態

(メンバー数・実施期間・実施方法等)や専科教員の同僚性の向上,指導の充実につながる仕組みに ついては,引き続き,検討が必要であると考えている。今後は,本研究の成果や課題をもとに新たなEP の取組を実施し,教師の成長につながる,現状に即した新たな教員研修の在り方についてさらなる検討を重ねていきたい。

謝辞

日々の業務で多忙を極めておられる中,本研究に多大なるご協力をいただいた 6 名の先生方に心からの感謝の意を表する。

引用文献

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