抄録
国産漆は、神社・仏閣の修復のため近年需要が増大しており、その増産が求められている。漆の増産には、ウルシ林の適切な管理とともに、育種を進めることが重要であると考えられる。しかし、これまでウルシの育種を行うための試験地が設定された例はほとんど無く、系統別の形質評価を行うことが困難である。そこで本研究では、SSR(Simple Sequence Repeats)マーカーを開発し、ウルシの自然交配実生を植栽した試験林の家系構造をマーカー情報から再構築し、家系毎の形質評価を行った。マーカー開発の結果、多型性の高い有用なマーカーを得た。試験地に植栽されている約800個体の成長測定とともに、DNAサンプルを採取し、開発したSSRマーカーによる遺伝子型の決定を行った。決定した遺伝子型に基づきSTRUCTURE解析を行った結果、4家系に分かれると推定された。したがって、本試験地の個体は異なる4母樹に由来すると考えられる。漆生産には個体の成長の良さが重要であると考えられるため、家系毎の樹高を評価した。その結果、家系によって優劣が認められ、ウルシにおいて優良形質系統の選抜の可能性が示唆された。