本研究では栃木県茂木町の落葉採集が毎年行われている落葉広葉樹二次林において、落葉採集の有無がオサムシ科甲虫の種組成と多様性に与える影響を調べた。同町、大瀬、大畑、鎌倉山の3地、落葉採集の有無別に各3、計6プロットを設置した。そして、5~11月の月1回、1プロットあたり15個のピットフォールトラップを3日間設置し、オサムシ科甲虫を捕獲した。また各プロットの環境要因(草本被度、ササ量、開空度、土壌水分量、A0層厚および半径500m以内の人家数)を調査した。捕獲調査の結果、4401頭を捕獲できた。最優占種はツクバクロオサムシであった。クラスター解析の結果、各プロットが落葉採集の有無によってまとまることはなく、Simpson多様度指数にも違いは見られなかった。次に、種組成と環境要因の関係を正準相関分析(CCA)によって解析をした結果、コクロツヤヒラタゴミムシのように人里から離れ、落葉採集の無いササ量の多い場所に出現する種がみられた。以上のように、オサムシ科甲虫相は落葉採集によって種組成が大きく変化することがないが、個々の種では、嗜好する環境要因によって出現する種が異なることが示唆された。