抄録
【背景】森林の持つ水源涵養機能が十分に発揮されるように森林施業を行うことが求められており、森林施業が流域に与える水文学的影響を明らかにする必要がある。神奈川県では森林施業の影響評価の為に、3つの隣接している小流域からなる貝沢流域において対照流域法によるモニタリング調査を2010年度から継続して行っており、2012年秋に流域1において、郡状間伐(20m×20mの部分皆伐を5か所)等の森林施業を行った。そこで、貝沢流域を対象に森林施業が流域に与える影響を明らかにした。【方法】対象の小流域はそれぞれ流域1(6.6ha)、流域2(8.3ha)、流域3(14.9ha)で、それぞれ90%近くがスギ、ヒノキの人工林で、地質は白亜紀から古第三紀の小仏層群である。森林施業は2012年9月末から翌年3月上旬まで行われ、流域1において本数割合で約25%の伐採整備が行われた。施業内容は保育作業、作業路保全作業、素材搬出作業等である。【結果】施業前後の流域1と流域2の日流量を比較したところ、流量の少ない期間では伐採流域である流域1の流量が多くなる傾向が見られた。洪水時の情報は今後の蓄積が必要であるが、現在までに取得できているデータでは大きな相違は見られなかった。