三宅島における2000年の噴火及びそれ以降継続されている火山活動により、広範囲にわたって植生被害が発生している。本研究では、現在も噴出している高濃度の亜硫酸ガスが三宅島に自生するオオバヤシャブシの成長および生理反応に及ぼす長期間の影響を明らかにするために、2007年4月、亜硫酸ガスの濃度により3箇所(高、中、低)の調査区を設けた。
調査区高で成長するオオバヤシャブシは調査区中と低に比べて低い光合成速度とクロロフィル蛍光反応(Fv/Fm)を示した。さらに、窒素固定根粒菌のアセチレン還元率は有意に低下した(P < 0.05)。調査区高で成長するオオバヤシャブシの葉内窒素濃度とクロロフィル(a+b)の有意な変化はなかったが、光合成窒素利用効率と光合成水利用効率は有意に低下した。その結果、生育場所の亜硫酸ガス濃度の増加によるオオバヤシャブシの成長の低下(50-70%)が見られた。