天然生木曽ヒノキは歴史と伝統あるブランド材として知られ、特に大径材は文化財補修用材として重要である。安定供給を目的とした大径木育成技術を確立するには、長伐期施業の目標林型を明確にする必要があり、実在する老齢木曽ヒノキの林分構造を明らかにすることは、目標林型設定の一助になる。そこで本研究では、長野県三浦実験林の300年生木曽ヒノキ天然生林において40m×50mのプロットを設置し、プロット内の立木のサイズ構成(樹高、直径、枝下高、根上がり高)を明らかにした。さらに、立木の空間配置様式を明らかにするために、プロット内の全生存個体の位置をXY座標で表現し、RipleyのK関数法(Ripley 1981)による点過程解析を行った。
約300年生木曽ヒノキ林を対象とした他の研究結果(三村ら 2007, 鈴木ら 2009, Matsushita et al. 2014)と比較して,平均樹高に差が見られなかったが、平均胸高直径は小さかった(p<0.05)。立木配置は1~3mの空間スケールで集中分布を示し、約8mの空間スケールで規則分布を示した。プロット内の個体が倒木・根株上に集中的に更新し、その更新基質である倒木・根株が規則的に配置されていた結果であると考えられる。