抄録
小哺乳類による捕食はハバチ類の大発生期における主要な死亡要因として報告されてきた。東京大学北海道演習林において、カラマツハラアカハバチの大発生動態に関わる要因を調べるため、2009年から5年間にわたり繭の死亡要因を調査した。カラマツ植林地の8林分で土壌サンプルを採集し、土壌に含まれる繭を正常と思われる繭、小哺乳類により捕食された繭、捕食以外の要因で死亡した繭に分類し、個数を調べた。解析では繭のデータに加えて、北海道演習林で行われた野鼠発生予察調査のデータを利用した。階層ベイズモデルを用いて、当年の新生繭数、空の繭の土壌中での年間残存率、小哺乳類による繭の捕食率、ネズミ類個体数と繭の捕食率の関係、繭数と捕食率の関係を推定した。小哺乳類による捕食はサンプリング前にも起こっていることから、サンプリング前後の小哺乳類捕食率を推定した。ヒメネズミ、アカネズミ、エゾヤチネズミでは個体数の増加が見られ、ネズミ捕獲数とともに繭の捕食率は増加する傾向にあった。