抄録
【目的】現在日本には放置林が多く、この問題を是正するべく間伐など施業が行われている。施業は森林植生だけでなく河川環境にも撹乱を与えていると考えられるが、知見は十分ではない。本研究ではスギ人工林を対象に水生昆虫群集の変化を施業区と未施業区で比較し、間伐の影響を検証する。【方法】調査地は京大芦生研究林の間伐区集水域1ヶ所と未間伐区集水域2ヶ所の3渓流である。間伐区では2012年の5月に40%間伐を行った。2010年12月から2013年11月まで計13回季節ごとにサーバーネット(25cm四方)で水生昆虫を4~6地点で採集した。同地点で付着藻類の採集、水深、流速、微細砂の割合も記録した。これら環境データを用いて間伐の水生昆虫群集への影響を検証した。【結果】間伐区では間伐後に水生昆虫の個体数が5.6倍に増加し、これは特定の摂食機能の水生昆虫(Shredders)の増加が寄与していた。間伐によるShreddersの増加は、間伐由来の枝条など餌資源の流入が原因であると考えられる。間伐区と未間伐区では間伐の影響による流速や水深、微細砂の割合で大きな違いは見られなかった。以上から本試験地では間伐による餌資源の変化が水生昆虫群集に影響していると示された。