【目的】湘南海岸砂防林前線の犠牲帯において、樹林構造と実生群落の定着条件を明らかにする。【方法】神奈川県湘南海岸砂防林の前線に造成されている犠牲帯内で実施した。調査内容は①レベル測量による地盤高②風衝形の角度③毎木調査(樹高、直径、樹冠厚、生枝下高)による樹林構造④実生群落内の実生の分布と相対照度及び土壌特性調査である。【結果】①犠牲帯内には前線の砂浜から運搬された飛砂が堆積し小砂丘状となっていた。②樹冠上部によって形成される林冠は緑葉を着けた生枝と枯枝で構成され、全体として風衝形を形成していた。③毎木調査の結果、最前線はトベラまたはシャリンバイが平均1.6mの高さで優占し、後方はウバメガシが優占するが、樹高は後方へ向かって順次高くなり、砂防林全面では7mに達していた。④実生群落はシャリンバイを優占種とし、ウバメガシ、シャリンバイ、ベラ、ヤツデで構成されていた。相対照度は前線部で12%、林内では2%未満のところが多かった。土壌水分は林内へいくほど高くなった。犠牲帯の衰退は背後の砂防林本体の健全性に影響を及ぼすと考えられることから、今後も引き続き注意深くモニタリングを継続する必要がある。