抄録
長野県最南端に位置する根羽村のスギ人工林138林分において植生調査を行い,植物種多様性に及ぼす林齢,森林施業,立地条件の影響を検討した。林齢は30から130年生であり,高齢林分は林道から遠く,立木密度が高かった。調査区は10m方形である。出現した種数は低木層および林床層でそれぞれ129種および451種であった。そのうち出現頻度が5%以上のものがそれぞれ42種および186種あったが,その出現がロジスティック重回帰分析によって予測可能であったものは(P=0.01),それぞれ31種(73%)および140種(75%)であった。次に,根羽村スギ人工林における林齢の影響を見るためにシミュレーションを行った。いずれも100年生までに3回の間伐を行い,その動態予測はシステム収穫表LYCSによった。5%以上の出現確率を示す種のうち予測可能な種はロジスティック重回帰式によって,予測不可能な種と出現確率が5%未満の種は乱数発生によって,それぞれ出現確率を求めた。その結果,林齢とともに多様性指数は増加したが,種数は減少した。これは初期段階に侵入しその後消失する種が,加齢とともに侵入する種を上回ったためであった。