近年,西日本を中心としてモウソウチク林の拡大が報告されている。著者は,共同研究者と共に,モウソウチク林の拡大が,森林の公益的機能に与える影響を解明すべく研究を行っている。その一環として,蒸発散の主要な要素となる遮断蒸発量についても,モウソウチク林において計測を行い,他のモウソウチク林の計測結果,他の森林タイプの計測結果と比較を行った。著者らの計測結果も含め,国内のモウソウチク林の遮断蒸発量の計測例は3例存在する。これらの3つのモウソウチク林の林分構造(立木密度など)は異なるが,遮断蒸発量が降水量に占める割合である遮断蒸発率は,どのモウソウチク林でも概ね10%となり,他の森林タイプで計測された遮断蒸発率よりも小さかった。このことから,モウソウチク林は,その特有な樹冠構造が遮断蒸発量を小さくしていると考えられる。このことは,遮断蒸発のメカニズムを議論する上で有用な情報となろう。