近年全球レベルでのCO2の濃度上昇が問題になっており、森林の持つ炭素蓄積機能の定量化が進められ、日本においては特に森林管理の効果や蓄積機能の樹種による違い温暖化時の変動評価などが求められている。しかし樹種や群落構造などの比較については多くの場合比較可能な長期データを持つ森林が異なった気象環境に存在しているため、環境とそれ以外の要素の分離が困難である。
本研究の試験地である大阪市立大学理学部附属植物園は、1950年代から吉良竜夫らの手により異なった樹種で構成されたに11の群落が育成されており、環境条件がほぼ同条件とみなせる同林齢の11種の森林が存在する。さらにこれらの群落において5年毎の毎木調査による長期モニタリングが行われている。本報告では11群落から常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、常緑針葉樹林の計8林分を対象に毎木調査による群落成長情報から森林の長期炭素蓄積過程における樹種-群落構造依存性の評価を試みた。その結果、長期的な群落炭素蓄積能の違いには一部の樹種依存性が見られるものの、それ以外の初期密度およびその変動、枯死率などの群落動態の違いが大きく関与していることが明らかとなった。