抄録
モモタマナはアフリカ、オーストラリア北部、東南アジア、ミクロネシアに広く分布し、日本では琉球列島と小笠原諸島に生育する。本研究では、小笠原諸島におけるモモタマナの遺伝的多様性と遺伝構造を葉緑体シークエンスと核マイクロサテライト(核SSR)マーカーを用いて調べた。遺伝的多様性は集団間で有意差は見られなかったが、最も開発の進んでいる父島においてボトルネックを受けた集団の存在が示唆された。葉緑体ハプロタイプの分布、核SSRの主座標分析の結果、小笠原諸島は(1)聟島列島と父島列島、(2)母島列島の2つのグループに大きく分けられた。核SSRを用いたSTRUCTURE解析においては、島ごとに独立したクラスターが生じている集団(西島、姉島、妹島)と、異なる島間でも似たクラスターの組成を示す集団(弟島と兄島北部、兄島南部と父島、母島南部と平島と向島)が見られた。隣り合う島間の水深が深い場合は独立したクラスターが生じ、隣り合う島間の水深が浅い場合は島間で似たクラスターの組成を示していたため、現在の遺伝子流動だけでなく、過去の海水面の変化による島の連結の歴史も本種の遺伝構造に影響したと考えられた。