ツツジ科イチヤクソウ属の植物は,アーブトイド菌根を形成する.中部・近畿地方のイチヤクソウ個体群では菌鞘のないアーブトイド菌根が形成され,外生菌根菌のベニタケ属が優占的に定着していた.これは,イチヤクソウが周囲の外生菌根性樹木と菌根菌を共有していることを示唆する.本研究では,東アジアにおけるイチヤクソウの菌根菌群集構造を明らかにすることを目的とした.そのため,3か国5地域から34個体のイチヤクソウを採取し,分子解析によって定着する菌根菌の分類を推定した.実体顕微鏡下で表皮細胞内菌糸コイルが形成された根を菌根として切り出した.菌根断片からゲノムDNAを抽出し,ITS領域をPCR増幅,クローニング,RFLPタイプ分けし,代表サンプルの塩基配列をシークエンサーにより決定した.現在までに4地域の解析を行い,ベニタケ科,イボタケ科などの外生菌根菌が検出された.得られるデータにもとづき,地理的,環境的要因が菌根菌群集におよぼす影響について議論する.