日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
セッションID: P2B116
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陽樹冠におけるブナの葉の形質、着花数、防御物質量の個体内・個体間差
*飯沼 久仁佳小山 浩正芦谷 竜矢
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抄録

個体群で同調して周期的に種子を生産するマスティング種は、豊作年にほとんどの個体が結実するとされてきた。ところが、顕著なマスティング性を示すブナでは、豊作年に結実個体と非結実個体が存在し、結実個体の樹冠内に結実枝と非結実枝が存在することが観察されている。個体群内に違いがあることから、個体間差、個体内差について検証する必要がある。当研究では、高所作業車によって41個体の陽樹冠から計205本の枝を採取し、着果数、葉の形質、防御形質の違いが、個体間のばらつき(CVp)、個体内のばらつきの平均(CVi)のどちらによるかを検証した。並作年だった2013年では、一枝あたりの着果数は個体間差が高かった(0~18個/50cm,CVp 112,CVi 42)。翌2014年の葉のSLAは個体内差が高く(94~163cm2/g,CVp 9.9,CVi 12.6)、樹冠内に形質の異なる葉をもつといえた。一方で防御形質は個体間差が高く(縮合型タンニン濃度2~12%,CVp 36.7,総フェノール濃度3~13%,CVp 26.2)、植食者による食害程度でも個体間差が高かった(24~45%,CVp 11.6,CVi 8.2)。形質によって個体間、個体内差の大小が異なることで、一つの林分でも個体ごとに異なる形質をもつと考えられる。

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© 2015 日本森林学会
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