北海道に広く分布するエゾシカは積雪により生息場所に制限を受けることが知られており,積雪期において積雪深が低い森林は越冬地に適している.また越冬地での植生被害にも積雪が関係していると考えられる.そこで支笏湖畔の南向きで急峻なため積雪真が浅い北側と,北向きで積雪真が深い南側斜面に着目し,北側と南側における積雪とシカ相対密度,樹皮剥ぎ被害度合い,森林構造を比較した.北側と南側で8ヶ所ずつ50m×4mのプロットを設定し,毎木調査,自動撮影装置によるシカの相対密度,積雪深を調査した.その結果,積雪深とシカ相対密度,シカ相対密度と樹皮剥ぎ被害,積雪深と樹皮剥ぎ被害でそれぞれに相関があった.北側は南側より積雪量が少なく樹皮剥ぎ被害が多く,稚樹が消失していた.以上の結果より,積雪深が浅い北側では冬季にシカの密度が高く,樹皮剥ぎが多く発生することで森林構造を改変されることが示唆された.