ナラ枯れの拡大に伴って各地で研究が開始され、本学会での発表件数は1992年を皮切りに2015年までに300件以上に達している。そのうち、防除法に関するものは3分の1を占めており、大雑把に分類すると、薬剤(フェロモン剤を含む)による防除が43件と最多で、資材による防除(19件)、被害把握(15件)、生物防除(12件)の順になっている。近年では、フェロモン剤や樹幹注入剤を用いた防除法の発表件数が増えているが、「枯死本数が減った」という報告はあっても、被害を完全に抑えた例は報告されていない。 ナラ枯れは伝染病であり、新たな枯死木が発生すれば、それが火種となって拡大するため、枯死本数を減らすだけの防除法では功を奏しない場合が多い。そのため、「新しい防除法」と銘打った防除マニュアルが作成されているが、「防除しても無駄」という考え方が浸透しつつある。ナラ枯れの防除法は確立されていないのが現状である。 しかし、京都府では資材(カシナガトラップやビニール被覆)による防除によって被害をほぼ完全に抑えた実例が増え、他府県にも普及している。本報告では、防除の成功例を紹介し、防除に失敗する要因について考察する。