抄録
伊豆大島では,2013年台風26号により,広範囲で表層崩壊が発生したが,その発生メカニズムは解明されていない。本研究では,伊豆大島の崩壊斜面を対象に,鉛直一次元浸透計算と斜面安定解析を行い,表層崩壊発生プロセスを検討した。浸透計算は,対象地の土層構造に対応した4層構造(表層土・テフラ・レス・テフラ)の条件で実施し,各層の土質定数と水分特性曲線は現地サンプルの分析結果から与えた。解析対象降雨は,2014年9月から2015年7月,および過去の豪雨とした。圧力水頭の計算値とテンシオメーターによる観測値との比較から,各層の圧力水頭を鉛直一次元浸透計算のみで再現可能であること,圧力水頭の最大値が得られた相対的な難透水層(レス層)がすべり面と一致することが明らかになった。得られた圧力水頭から地下水深を与え安定解析を行ったところ,崩壊が発生した1958年と2013年の降雨の浸透解析結果から地下水深を与えた場合に,斜面の安全率が1以下となった。これらの結果は,火山地域特有の土層構造に対応した鉛直浸透プロセスにより,相対的な難透水層上に一時的に発生した飽和帯が,伊豆大島での表層崩壊の直接的な原因になったことを示唆する。