抄録
温暖化影響を予測するためには、積雪減少が落葉分解呼吸に与える影響を評価することが重要である。落葉分解呼吸の温度応答性は、落葉の分解段階や微生物バイオマスの変化によって季節変動すると考えられる。そこで、2014年10月から翌年5月まで、北海道東部の冷温帯落葉広葉樹林で、積雪が落葉分解呼吸の温度応答性の季節変動に与える影響について調べた。2 m四方のプロットを2つ作り、一方を積雪区、他方を除雪区として、除雪区の雪をスコップで除去した。月に1回両区内の4箇所でミズナラ落葉を採取して分解呼吸速度を測定し、Q10を求めた。また、分解段階の指標としてC/Nを、微生物バイオマスの指標としてSIR(基質誘導呼吸)を測定した。どの測定項目も積雪区と除雪区の間の違いが殆ど見られず、SIRには季節変化が殆ど無かったのに対し、Q10とC/Nは秋から春にかけて減少傾向を示し、特に11月と12月の間での減少が著しかった。この期間、凍結融解の頻発によって落葉の構造が破壊され分解が急速に進んだことによって、微生物活性が下がったのではないかと考えられた。