抄録
長野県におけるコンテナ苗の適用性を検討するため,北信,東信,南信各地において,伐採造林一貫作業システムによって植栽されたコンテナ苗の活着率と初期成長を調べた。調査地と植栽樹種は北信の信濃町・霊仙寺山国有林のスギ,東信の御代田町・浅間山国有林のカラマツ,南信の根羽村・村有林のヒノキである。このうち信濃町と御代田町は内陸性気候のため年降水量が約1250mmと少ない。植栽試験の結果,根羽村では良好な活着率と初期成長が得られたものの,御代田町では活着率が67%と著しく低い値を示した。また信濃町では活着率は90%だったが1年目の樹高成長速度が1cm/年未満という劣悪な成長経過を示した。ただし信濃町では2年目に樹高成長速度が30cm/年に回復したことから,1年目には根系への物質分配など強いプランティングショックに対する順応的応答が行われていたことが示唆された。このように長野県の中部から北部の地域は内陸性気候のため,コンテナ苗といえども活着率や成長量の極端な低減が生じる。これらの結果は一貫作業システムの万能性に疑問を呈するが,裸苗も活着や成長を強く抑制されたことから,コンテナ苗の優位性が否定されたわけではなかった。