日本森林学会大会発表データベース
第127回日本森林学会大会
セッションID: T4-15
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学術講演集原稿
「経験の消失」時代における都市近郊林の役割
*曽我 昌史
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抄録

我々が日常生活で自然と触れ合う頻度は大きく減少している。今から20年前、昆虫学者であるRobert M. Pyleは、こうした現代社会における自然離れを「経験の消失:The Extinction of Experience」と命名し、健康・福利上の問題はもとより、環境保全上深刻な影響をもたらすことを警告していた。それから四半世紀経った今、経験の消失は大きな社会問題として認識され始めてきたが、原因やプロセスなど不明な点も多い。本講演では、森林科学、生態学、公衆衛生学、環境心理学など多様な分野の研究報告をレビューし、経験の消失に関する知見の体系化を試みた。既存研究を調べた結果、経験の消失は公共の健康・福利を低下させるだけでなく、社会の自然環境に対する親近感・関心・保全意識をも減少させることが明らかとなり、経験の消失には正のフィードバックが働くことが示唆された。こうした経験の消失に伴う負のスパイラルから脱却するためには、人口の大多数が居住する都市において人と自然の関係を再構築することが必須である。本講演では、こうした「経験の消失」時代における都市近郊林の役割について議論したい。

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