抄録
檜皮は日本で古来から屋根材と利用されてきた。現在でも檜皮葺は社寺や庭園内にある建物の屋根に見られ、その優美な姿は多くの国宝や重要文化財に指定され代表的な日本文化の一つとなっている。檜皮葺は一定年数経つと葺き替える必要がある。これは植物性材料を使った日本建築に共通する宿命であり、技術の伝承・材量の確保という観点からすれば重要なポイントになる。 高度経済成長期(1954~1973)の終わった頃には多くの伝統的な技法の継承や材料の供給などが危機に直面したが、関係者の努力によって対策が講じられ、徐々に回復しつつある。その一つが全国社寺等屋根工事技術保存会で、技術保存と向上を目的としている。 京都大学徳山試験地(山口県)には昭和初期に植栽された90年生のヒノキ林があり、2005年に荒皮を採取して10年目になることから、今年度は黒皮を採取出来るようになり檜皮採取技術査定会も開催された。徳山試験地では周南市及び保存会と協力し、檜皮採取を題材とした見学会を実施した。今回は森林教育の題材として檜皮・原皮師(もとかわし)を取り上げる。(連絡先:中島皇 tnakashi@kais.kyoto-u.ac.jp)