本研究では異なる土壌環境に生育するコナラ成木の葉の特性と植食者による食害率の樹冠内鉛直分布を調べた。2019年7月に東京農工大学農学部附属フィールドミュージアム多摩丘陵、草木、津久井、秩父、唐沢山および府中の6地点で、コナラ成木6個体の樹冠内5高度から葉を採取した。採取した葉の食害率、葉の糖、デンプンおよびタンパク質などの一次代謝物質の濃度、フェノール化合物などの化学的防御物質の濃度、細胞壁量および葉硬などの物理的特性を測定し、葉の食害率と各特性の鉛直分布を解析した。土壌環境として、鉱質土壌の養分濃度や窒素無機化速度などを測定した。葉の食害率は、貧栄養な環境よりも富栄養な環境のコナラの方が高かった。一方、全調査サイトにおいて、コナラ成木の葉の食害率に、樹冠位置による明確な違いはなかった。化学的防御物質であるフェノール化合物の濃度は樹冠上部で高く、樹冠下部にかけて減少した。一方、物理的防御の一つである細胞壁量は樹冠上部で低く、樹冠下部にかけて増加した。以上より、コナラは樹冠位置によって主な防御手段が異なり、その結果として、葉の食害率に樹冠内鉛直分布が見られなかったと考えられる。