都道府県や国内全体の過去の森林の様子は森林・林業白書をはじめとした統計資料で把握できるが、地域ごとの過去の森林の様子を把握することは困難であるため、その地域の過去の森林の様子を捉えた空中写真は重要な資料である。本研究では、岐阜県高山市岩井地区の森林について、1963年・1995年の空中写真をオルソ化し、2017年のオルソ空中写真を併用して、森林の変化を追跡した。1963年では、人工林、伐採後とみられる低木の広葉樹林、畑や草地などを含む無立木地・灌木地といった、人の土地利用があったと考えられる土地被覆が対象地全体にモザイク状に広がり、高度な森林利用があったことが分かった。1995年では、集落に近い北向き斜面の土地を中心に人工林化が激しく進み、薪炭生産の需要がなくなった広葉樹林では低木の林分が減少し、同様に飼料や緑肥としての需要がなくなった無立木地・灌木地の面積も減少した。2017年は、ほぼ1995年の土地被覆を引き継いでおり、多くの人工林が標準伐期齢に達しているにも関わらず、主伐を伴う変化はごく一部であった。これにより、人工林と広葉樹林で高齢化が進み、全体に樹高が高くなった。