日本森林学会大会発表データベース
第134回日本森林学会大会
セッションID: P-477
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学術講演集原稿
生葉・枯死葉・水生昆虫間のセシウム137濃度変化
*金指 努和田 敏裕
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抄録

森林を流れる渓流の生態系では、渓畔林から渓流へ供給される外来性有機物が重要な一次生産物の役割を担っている。そのため、渓畔林が放射性セシウムに汚染されると、渓流生態系も食物網を通して放射性セシウムが移行していき、漁業対象種となっている魚類の放射性セシウム汚染につながると予想されるが、詳しいプロセスについての知見が少ない。本研究では、福島県の放射性セシウム高汚染地域の渓流にて、渓畔域の樹木の生葉が枯死脱落して河川に堆積し、枯死葉を食物源とする水生昆虫が放射性セシウム取り込む過程におけるセシウム137濃度の変化を明らかにした。2021年から2022年の秋期または冬期に、それぞれの秋期に地表に落下した枯死葉を樹種別に採取し、さらに河川に堆積している枯死葉及び枯死葉を摂食する水生昆虫(カクツツトビケラ科;Lepidostomatidae)を採取した。渓畔林の樹木の生葉は2022年の夏期に採取した。それぞれのセシウム137濃度の大小関係は、生葉>地表の枯死葉>河川の枯死葉>カクツツトビケラ科の傾向を示し、渓畔林の生葉が枯死して渓流に堆積し水生昆虫に摂食される過程でセシウム137濃度は低下していくことが明らかになった。

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© 2023 日本森林学会
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