抄録
本稿では,程度副詞をカテゴリーとして用いた評定尺度図を,程度副詞の表す程度の個人差や尺度図の回答しやすさを考慮して,システマティックに設計する新しい方法を提案する.システムを構築するための基礎的知見を得るために,尺度図の作成,尺度図の回答しやすさおよび配置状態に関する順位評定などの作業から構成される2つの心理実験を実施した.そして得られた結果をもとに,まず本稿のアプローチの必要性を明らかにするため,回答しやすい尺度図に個人差が認められることを例示する.次にシスデムで扱う必要のある要因を明らかにするため,回答しやすさの評価に影響を及ぼす要因を抽出する.そしてそれらの要因を定量的に扱う方法を確立するため,回答しやすさおよびカテゴリー配置の主観的順位評定とカテゴリー配置に関する数値指標の候補をもとに,回答しやすさと配置の関係を明らかにする.さらに提案システムの構成を決定するため,カテゴリーの配置の指標に基づいた尺度図の回答しやすさの予測可能性について論じる.最後に,得られた知見をもとにして,回答者との対話を通して各回答者に適した尺度図の設計を支援するシステムの構成を提案する.
