抄録
通常の時系列分析は間隔尺度や比率尺度で測定された時系列データを扱う。しかし、心理学、社会学、民族学などでは、データ収集過程において人間の判断や認知が関わるファジィ時系列データにしばしば遭遇する。そのような場合、反応の傾向を調べることは最も重要な研究活動の一つである。傾向を明らかにする一つの方法は、変動を視覚化することである。この目的を達成するため、「質的データの時系列分析」(稲垣,1997)のファジィ・カテゴリー・データへの拡張として、「質的データのファジィ時系列分析」を提案する。この方法のアイデアは、カテゴリー・スコアと時間の関数の相関係数が最大になるように、カテゴリーにスコアをつけることである。この方法では、傾向を表現するために3つのモデル、すなわち、非可逆モデル、可逆モデル、循環モデルが用意されている。この方法は、ファジィ時系列データのみならず、数値変数群とファジィ・カテゴリー変数群の関連性を探索するために、ファジィ・カテゴリー・データを分析する道具として、広い範囲で利用することができる。この論文では、数学的定式化と代数的解法を示し、技術的な問題点や他の方法との関連性も議論した。