日本ファジィ学会誌
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ファジィ範疇法による心理尺度構成とその実験的検証(<特集論文>人文・社会科学へのファジィ理論の応用)
吉川 歩西村 武
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1993 年 5 巻 4 号 p. 719-731

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抄録

本論文は, "かなり背が高い"のようなカテゴリーを使って測定された主観的な程度を定量化する方法について論じる.まず吉川ら (1991) の評定判断過程のモデルをもとに, その方法を導出している.従来の系列範疇法が刺激に対する評定結果の統計的な分布をもとにカテゴリーの尺度構成を行っていたのに対して, このファジィ範疇法と名付けられた方法はカテゴリーと同じ言語ヘッジをもつ言語真理値のメンバシップ関数を用いて尺度構成を行う.このことにより, 従来法で扱い難かったカテゴリーの意味の個人差およびベイグネス, そして文脈の影響などを適切に扱うことができる. また提案方法の妥当性を示すために, 心理実験を行った.ランダムドット図形から受ける"点の多さ-少なさ"の印象を, 本方法とファジィグラフ評定尺度法により測定した.その結果, 両方法による心理尺度値は高い一致度を示すこと, およびそれらの間に線形関係が成立することが確認できた.さらに本方法によって得られた心理尺度値が間隔尺度に関する二つの公理を満たすことを示した.これらより, 本方法が心理尺度構成法として有効に機能することが検証できた.

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© 1993 日本知能情報ファジィ学会
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