抄録
皮膚の局所的な乾燥に対して湿度が及ぼす影響を明らかにするための基礎的検討として、皮膚角層を通し
ての水分蒸発、すなわち不感蒸泄の部位差を推定した。皮膚角層の透湿抵抗が角層厚さに比例すると仮定し、既往
の不感蒸泄の算定に用いられる値を基準として、人体各部位の透湿抵抗を文献値を用いて計算した。全身の平均
的な角層の透湿抵抗と比較して、手部や足部では 1.7~9.5 倍、背部、腹部、胸部では 0.1~0.8 倍となった。腕や
脚でも概ね平均値より小さかった。また、風速、着衣が、発汗の無い場合の皮膚表面水分蒸発量に与える影響につ
いて検討した。1m/s 程度までであれば風速の影響は小さい。従来の角層の透湿抵抗を用いる場合、概して着衣の
影響は小さいが、角層の薄い部位に関しては、着衣の透湿抵抗が、皮膚角層下からの室空気までの透湿抵抗の 2~
3 割を占める例も想定される。皮膚乾燥に対し、着衣の透湿抵抗が影響する場合のあることが示唆された。