The Japanese Journal of Mental Imagery
Online ISSN : 2434-3595
Print ISSN : 1349-1903
An Attempt to Create a Cognitive Style Scale for Upper Grade Elementary School Children (trial version)
Anji Fukaya, junko Ohashi, Junichi Takahashi
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2026 Volume 21 Issue 1 Pages 1-7

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Abstract

本研究は,高学年児童を対象として言語型 - 視覚型次元の認知スタイルを測定することができる尺度の試行版の作成を目的とした。小学 4,5 年生の児童 197 名が質問紙に回答し,その信頼性と妥当性を検討した。探索的因子分析からは,空間情報の処理に関する「空間視覚思考因子」,言語情報の処理および物体情報の処理が混在すると考えられる「言語―物体視覚思考因子」の 2 因子が抽出された。言語―物体視覚思考因子について,児童期では認知スタイルが未分化であるため,言語情報と物体情報に関する認知スタイルが混在している可能性を推測した。これらの因子は,内的整合性と確認的因子分析における因子の適合指数の値から,十分な信頼性と因子的妥当性をもつことが確認された。

Translated Abstract

The present study aimed to create a children’s version of a cognitive style scale that can measure a tendency of object-visual, spatial-visual, and verbal thinking. A total of 197 children(4th and 5th graders)responded to the questionnaire, and we examined its reliability and validity. Exploratory factor analysis revealed two factors: the “spatial-visual thinking” factor for processing spatial information and the “verbal and object-visual thinking” factor for processing verbal information and object information. Regarding the verbal and object-visual thinking factor, we speculated that cognitive styles were undifferentiated in childhood, thus, cognitive styles related to verbal and object information may have been extracted in a mixed manner. We confirmed its sufficient reliability and validity based on internal consistency and fit index.

イメージ心理学研究 2023, 21, 1−7 1

〔資料論文〕

高学年児童用認知スタイル尺度(試行版)の作成 1

深 谷 あんじ 大 橋 淳 子 髙 橋 純 一

(福島大学大学院教職実践研究科)(福島大学大学院教職実践研究科) (福島大学人間発達文化学類)

本研究は,高学年児童を対象として言語型 - 視覚型次元の認知スタイルを測定することができる尺度の試行版の作成を目的とした。小学 4,5 年生の児童 197 名が質問紙に回答し,その信頼性と妥当性を検討した。探索的因子分析からは,空間情報の処理に関する「空間視覚思考因子」,言語情報の処理および物体情報の処理が混在すると考えられる「言語―物体視覚思考因子」の 2 因子が抽出された。言語―物体視覚思考因子について,児童期では認知スタイルが未分化であるため,言語情報と物体情報に関する認知スタイルが混在している可能性を推測した。これらの因子は,内的整合性と確認的因子分析における因子の適合指数の値から,十分な信頼性と因子的妥当性をもつことが確認された。

問題と目的

認知スタイルとは,特定の刺激に対する典型的な反応や複雑な行動の根底にある認知的な判断の傾向を概念化したものであり,個人の情報処理や習得の方法について一貫して示される心理的な次元である

(Ausburn & Ausburn, 1978)。認知スタイルのなかでも言語型―視覚型(Richardson, 1977)は,思考や想像,問題解決において,個人が言語情報処理あるいは視覚情報処理のいずれかの処理を好んで用いる傾向を示す次元である(川原,2021)。

これまで児童を対象とした学習支援において,認知スタイルを考慮することの有効性が指摘されてきた(たとえば,春原・宇野・金子,2005;佐囲東, 2009)。特に,特別な教育的支援を必要とする児童を対象とした漢字書字学習の研究では,児童が聴覚優位である事例(春原他,2005)と視覚優位である事例(佐囲東,2009)について,どちらも対象児の認知スタイルに合わせた指導法の効果が明らかにされている。また岡田(2022)は,平成 29 年告示の小・中学校の学習指導要領(文部科学省,2018a,2018b)と中央教育審議会の答申(2016)から,初等中等教育において児童自らが学習のプロセスを進める自律的な学習者像が想定されていると指摘している。加えて,近年,資質・能力の育成を目指して,それぞれの児童が自分の目標や興味関心に応じて自身が学習を進めていくとす

1 調査対象者における項目内容の理解をふまえると,本尺度を使用する際にはより高学年の児童(5,6 年生)を対象とすべきである。また本尺度は試行版であり,今後,改訂がある可能性についても注意してほしい。

る「個別最適な学び」の充実が求められていることもふまえると(中央教育審議会,2021),児童はこれまで以上に自分の得意な処理や習得の方法を自覚したうえでそれらを活用して,自ら学習を進めていく必要があるといえる。そのためには,指導・支援において,学習者自身あるいは教師が児童の認知スタイルを把握することが重要となる。

児童の認知スタイルを測定する方法として,まずは心理検査があげられる。たとえば,児童を対象に測定できるウェクスラー式の知能検査(Wechsler Intelligence Scale for Children-Fourth Edition:WISC-Ⅳ, Wechsler, 2003 や WISC-V:Wechsler, 2014)があるが,保護者の承諾や児童の心理的負担,時間的制約など負担が大きいため,特に学校現場での使用を想定すると,全ての子どもについて心理検査を実施することは現実的ではない。他には,成人を対象とした認知スタイル質問紙を児童に適用した研究もある。Hatakeyama

(1997)は,Richardson(1977)の言語型 - 視覚型質問 紙(Verbalizer-Visualizer Questionnaire:VVQ)を児童版に改訂して,ひらがな表記の単語完成課題を実施したところ,視覚型が優位な児童におけるプライミング効果を示した。このことから,児童の認知スタイルを測定する方法の一つとして,児童版 VVQ を用いることが有効であるといえる。

ここで,成人を対象とした認知スタイルの測定方法に目を向けてみる。前述した VVQ は,Paivio(1971)の個人差質問紙(Individual Differences Questionnaire: IDQ)から 15 項目を抽出して作成されたものである。近年では,物体イメージと空間イメージのスタイルを測定

できるOSIQ(Object-Spatial Imagery Questionnaire: Blajenkova et al., 2006),さらに OSIQ に VVQ の言語型尺度の次元を加えたOSIVQ(Object-Spatial Imagery Verbal Questionnaire:Blazhenkova & Kozhevnikov, 2009)も提案されている。OSIVQ は,一つの質問紙のなかで物体情報処理,空間情報処理,言語情報処理のそれぞれの傾向を測定できるという点で優れており,VVQ よりも詳細な検討ができると考えられる。

これに関連した日本の研究としては,川原・松岡

(2009)が日常生活における視覚イメージ処理の使用傾向を測定する視覚イメージスタイル質問紙(Visual Imagery Style Questionnaire:VSIQ)を作成している。さらに川原(2021)は,OSIVQ のように物体情報処理,空間情報処理,言語情報処理のそれぞれの傾向を測定できる質問紙として表象スタイル質問票

(Representation Style Inventory:RSI) を作成して提案している。この質問紙は 30 項目から構成されており,「物体視覚思考(10 項目)」,「空間視覚思考(10項目)」,「言語思考(10 項目)」の 3 因子構造をもつものである。これらの因子は確認的因子分析や内的整合性,時間的安定性の観点から,十分な信頼性や因子的妥当性をもつことが確認されている。

RSI は物体情報処理,空間情報処理,言語情報処理の観点から認知スタイルを測定できるため,この尺度を児童の認知スタイルの特徴を測定する方法として援用できれば,指導・支援に関して有用な指標を得ることができると考える。また前述の心理検査を用いる際には,保護者の承諾や児童の心理的負担,時間的制約などの困難さがあることも考慮すると,児童用の RSIを使用することは,特に学校現場での使用を想定することが有効であると考えられる。これに関連して,海外では Blazhenkova et al.(2011)によって,OSIVQの子ども版(Children's Object–Spatial Imagery and Verbal Questionnaire:C-OSIVQ)が作成されているが,C-OSIVQ の日本語版は存在しない。先に見たように,既に川原(2021)が OSIVQ に関連した日本語の尺度である RSI を完成させているのであれば,これを用いて児童版の尺度を作成することが現実的であろう。そこで本研究では,RSI をもとにして,児童の認知スタイルを測定することができる尺度の試行版の作成,およびその信頼性と妥当性を検討することとした。

方 法

調査参加者 調査参加者は,X 小学校に在籍する小学 4,5 年生の児童 206 名であった。そのうち,回答を得た 197 名を分析対象者とした。

尺 度 RSI(川原,2021)の質問項目について,第 1 著者と第 2 著者(どちらも小学校の教員経験がある)が児童を対象にした際に回答できる表現に一部変更した。そのうえで,変更後の表現で回答可能かどうかについて小学校籍の現職教員院生 4 名に確認してもらった。その結果,小学生の生活や学習の観点では回答が難しいとされた 10 項目を省き,全 20 項目から成る質

問紙を作成した。省いた 10 項目について,具体的には,物体視覚思考因子:“1. 人の体験談を聞いているとき,私はときどきその状況を生き生きと想像している自分に気づくことがある ”,“3. 小説を読んでいるときには,私はいつもそこに描かれている部屋や情景についてはっきりとしたイメージを細部にわたって思い浮かべる ”,“7. ラジオのアナウンサーや DJ が話すのを聞いているとき,いつもその情景や様子を具体的に思い描いている自分に気づく ” の 3 項目,言語思考因子:“14. 単語の同音異義語(移動と異動など)をすぐに思いつく”,“16. 難しい文章でも比較的速く読める”, “17. 自分が話す内容の要点を抑えながら会話できる ”

の 3 項目,空間視覚思考因子:“25. 3 次元的な立体図形を回転させたときに,その図形がどのような形に見えるかイメージすることができる ”,“26. 3 次元的な立体図形を描くのが得意である ”,“29. ホテルや旅館の部屋に入るとその部屋がどちら向きの部屋になっているのかわからなくなる ”,“30. 建物の見取り図や平面図を書くのが得意である ” の 4 項目であった(数字は,川原(2021)での質問項目の番号を示す)。

本調査の教示は,「以下の質問項目がどの程度自分にあてはまると思いますか。当てはまるお考えに〇をつけてください。」であり,「全く当てはまらない」から「よく当てはまる」の 5 件法および「わからない」で回答を求めた。

手続き 調査は,各学級担任によって学級の都合のよい時間に集団で実施された。回答時間は 5 分から 10分程度であった。

分析方法 因子構造を検討するために,探索的因子分析を実施した。また因子数を特定するために,カイザー基準とスクリープロット法の採用に加えて平行分析も行った。因子の信頼性についてはクロンバックの α係数を算出し,妥当性については因子的妥当性の観点から確認的因子分析を行った。用いた統計ソフトは,探索的因子分析およびクロンバックのα係数の算出では SPSS 29.0,平行分析では HAD 18.0(清水, 2016),確認的因子分析では Amos 29.0 を用いた。

倫理上の配慮 質問紙のフェイスシートに,調査の目的,参加は任意で拒否による不利益は被らないこと,個人情報保護に関する説明を明記した。本調査は無記名であり,質問紙調査に回答することによって同意が

得られたとみなした。さらに,調査参加者は児童であったため,X 小学校を通じて保護者に依頼文書を送付し,本調査の趣旨や倫理上の配慮について周知した。本研究の実施については,第 3 著者を研究代表者として,福島大学の研究倫理審査を完了した(2023-07)。

結果と考察

1.因子構造の検討

Table 1 に,探索的因子分析の結果を示す。分析対

象者 197 名の評定値から相関行列を求め,因子分析

(主因子法およびプロマックス回転)を行った。その結果,固有値が1 以上の因子は5 つあったが,スクリー

プロットにおいて第 2 因子(固有値:2.00)と第 3 因子(固有値:1.24)との間に明らかなギャップがあっ

たため,2 因子解が妥当であると判断した。この 2 因子解は,平行分析によっても推奨されるものであった。2 因子解として因子分析を行ったところ,因子負荷量が極端に低い項目(< 0.30)が 2 つあった。具体的には,“6. わたしは,1 度,目にした絵画や写真,テレビや映画などのイメージがいつまでも頭の中に残っている(因子負荷量:0.29)” および“13. わたしは,漢字を覚えるのが得意だ(因子負荷量:0.17)” であった。また,第 1 因子と第 2 因子の両因子にかかって

因子負荷量が 0.20 を超えている項目が 3 つあり,具

体的には “2. わたしは,写真のようにくっきりとした

記憶を持っている(第 1 因子の因子負荷量:0.37,第

2 因子の因子負荷量:0.28)”,“7. わたしは,目を閉じて過去に経験した光景を簡単に思い出すことができる

(第 1 因子の因子負荷量:0.32,第 2 因子の因子負荷量: 0.36)” および “11. わたしは,ある言葉の反対の意味の

Table 1 Factor analysis of children version of RSI(N = 197)

質問項目 Ⅰ Ⅱ

空間視覚思考因子 6 項目(a = 0.90)

17 わたしは,言葉で目的地までの行き方を教えてもらえば,目的地までの正しい道筋がわかる。

18 わたしは,道を曲がるところでいちいち目印を確認しなくても目的地に行ける。

19 わたしは,右折左折を繰り返して目的地に着いたとき,帰り道はどこでどう曲がったらよいかわかる。

15 わたしは,地図を見ると,自分がいる場所をすぐに見つけることができる。

20 わたしは,よく行く場所で道に迷うことなく,間違った方向に行くこともない。

16 わたしは,頭の中で立体の図形を簡単にイメージしたり,回転させたりすることができる。

-0.08

-0.05

-0.05

0.03

0.10

0.14

言語一物体視覚思考因子 9 項目(a = 0.81)

8 わたしは,文章を書くとき,たくさんの言葉が次々に浮かんでくる。

-0.07

0.69

9 わたしは,文章で自分の気持ちを相手にうまく伝えることができる。

-0.03

0.64

10 わたしは,意味が似ている言葉を次々に思い浮かべることができる。

0.13

0.57

12 わたしは,文字や言葉を使う活動を楽しいと思っている。

-0.12

0.56

3 わたしは,映像的なイメージを思い浮かべながら本を読むことが多い。

0.05

0.51

5 わたしは,考え事をするとき,絵や映像的なイメージをすることが多い。

0.01

0.47

14 わたしは,文章のちょっとしたまちがいによく気がつく。

0.03

0.45

4 わたしのイメージはとてもくつきりとしていて写真のようだ。

0.19

0.44

1 わたしは,日常生活のなかで,いつも映像的なイメージが浮かんでいる。

0.06

0.33

固有値

5.01

1.99

因子の寄与率(%)

33.42

13.27

累積寄与率(%)

33.42

46.69

言葉(高い⇔低い)を聞かれてもすぐに答えられる

(第 1 因子の因子負荷量:0.21,第 2 因子の因子負荷量: 0.33)” であった。狩野(2002)によれば,2 つの因子に大きな負荷量をもつ観測変数は因子分析のモデルに適合しておらず,これらを削除することでモデルの適合度が改善されることが経験的に多いこと,また尺度化する際にこれらの観測変数の扱いに困るということなどが指摘されている。したがって,これら 5 項目を削除したうえで,再度,因子分析を行ったところ,15項目から成る 2 因子が抽出された。第 1 因子では,“17.わたしは,言葉で目的地までの行き方を教えてもらえば,目的地までの正しい道筋がわかる ” や “19. わたしは,右折左折を繰り返して目的地に着いたとき,帰り道はどこでどう曲がったらよいかわからなくなる ” などが高い負荷量を示した。これらは空間情報の処理に関わるものであると考えられたため,川原(2021)に倣って「空間視覚思考因子」とした。第 2 因子では,

“8. わたしは,文章を書くとき,たくさんの言葉が次々に浮かんでくる ” や “9. わたしは,文章で自分の気持ちを相手にうまく伝えることができる ” などの言語情報の処理に関する内容に加えて,“5. わたしは,考え事をするとき,絵や映像的なイメージをすることが多い”や “4. わたしのイメージはとてもくっきりとしていて写真のようだ ” などの視覚情報の処理に関する内容も含まれていた。川原(2021)で得られた「言語思考因子」と「物体視覚思考因子」の両方を含んでいると考えられたため,本研究では第 2 因子を「言語―物体視覚思考因子」とした。 2.信頼性および妥当性の検討

信頼性係数(クロンバックのα係数)を算出したところ,第 1 因子ではα= 0.90,第 2 因子ではα= 0.81

であった。どちらの因子も信頼性係数が 0.80 を超えていたため,内的一貫性は高いと考えられる。

妥当性については,川原(2021)と同様,因子的妥当性に着目して検討した。Amos 29.0 を用いて確認的因子分析を行ったところ,得られた概念モデルの適合度について,χ2 = 146.30(p < .01),GFI = 0.91, AGFI = 0.88,CFI = 0.94,RMSEA = 0.06 で あ っ

た。それぞれ,GFI は .90 よりも大きい場合,AGFIは .85 よりも大きい場合,CFI は .95 よりも大きい場合に適合度として十分であり,RMSEA については,

0.05 未満は適合度が高く,0.05 ~ 0.1 は適合度が中程度,0.1 より大きいと適合度が低いと言われている

(Schermelleh-Engel et al., 2003)。したがって,本研究の尺度については,GFI,AGFI,CFI の観点では適合度として十分であり,RMSEA の観点では適合度は中程度であったといえる。

総合考察

本研究は,児童の認知スタイルを測定するための尺度の試行版を作成することを目的とし,その信頼性と妥当性を検討した。結果から,この尺度は空間視覚思考因子,言語―物体視覚思考因子の 2 因子構造であることを確認した。

本研究で作成した尺度は,成人を対象とした RSI

(川原,2021)の項目を参照し,それらが児童でも回答できるように,現職の小学校教員による表現の調整を行ったうえで質問項目として用いた。成人を対象とした RSI は,物体情報処理,空間情報処理,言語情報処理に関する 3 因子によって構成されている。一方で本研究の尺度については,同様に空間情報処理に関する因子は抽出されたものの,言語情報処理と物体情報処理に関する因子がまとまって抽出された。この理由のひとつとして,児童期における認知スタイルの未分化が推測される。特に注目すべきと考えられるのは,OSIVQ(Blazhenkova & Kozhevnikov, 2009)の子ども版(C-OSIVQ)を作成した Blazhenkova et al.(2011)の研究 1A と研究 1B の相関分析の結果である。C-OSIVQ は,OSIVQ と同様に物体情報処理,空間情報処理,言語情報処理に関する認知スタイルを測定することができる。研究 1A と研究 1B では,それぞれ 9 ~ 17 歳と 8 ~ 17 歳の子どもを対象として,認知スタイルに含まれる各因子同士の相関,および認知スタイルに含まれる各因子と様々な認知能力との相関係数が算出された。その結果,物体情報処理と言語情報処理との間に有意な中程度の相関が見られた(研究 1A の相関係数:0.38,研究 1B の相関係数: 0.56)。一方で,物体情報処理と空間情報処理,および言語情報処理と空間情報処理との間には有意な相関は見られなかった(物体情報処理と空間情報処理との相関について,一部,有意傾向のみが見られた)。 Blazhenkova et al.(2011)では,このことについて取り立てて考察はされていない。また因子分析も行われていないので,そもそも OSIVQ のように空間情報処理,物体情報処理,言語情報処理に関する 3 因子が C-OSIVQ でも抽出されるのかどうかわからない。しかしながら,OSIVQ では物体情報処理と言語情報処理との間に有意な相関は見られていないことをふまえると,C-OSIVQ において物体情報処理と言語情報処理との間に有意な相関が見られたことは,児童を対象とした場合の特徴と言えるかもしれない。さらに, Blazhenkova et al.(2011) の研究 2 では,C-OSIVQを用いて 8 歳以降の認知スタイルが測定された。統計的に見ると,年齢における認知スタイルの評定値の差は見られなかったが,より若年の参加者(8 ~ 10 歳

程度)では認知スタイルの評価に曖昧な傾向があった。つまり,児童(特に 10 歳程度)の場合は,認知スタイルが未分化であると推測できる。以上より,認知スタイルの測定において,児童を対象とした場合,空間情報処理は一つの因子として抽出される一方で,物体情報処理と言語情報処理は類似した概念として捉えられている可能性があり,その理由のひとつとして,認知スタイルが未分化であることが推測される。このため,本研究の尺度においても,空間視覚思考因子は抽出されたものの,物体視覚思考因子と言語思考因子は混在して抽出された可能性がある。

別の可能性として,本研究では RSI における項目の表現を児童用に変えて用いたが,一部は児童の生活や学習場面に適していなかったことも推測できる。あるいは,項目の内容として,言語情報処理に関する項目と物体情報処理に関する項目とが区別しにくかった可能性もある。たとえば,“3. わたしは,映像的なイメージを思い浮かべながら本を読むことが多い ” では,「映像的なイメージ(物体情報処理)」と「本を読む(言語情報処理)」とが混在している。したがって,今後の課題として,言語情報処理や物体情報処理を明確に分けること,あるいは言語情報処理や物体情報処理について児童の生活や学習場面に適した項目も新たに作成して質問紙に含めると,両因子を区別して抽出することが可能となるかもしれない。

本尺度の信頼性に関しては,各因子における内的整合性の観点から,十分な信頼性をもつことが確認された。また本尺度の妥当性については,本研究では因子的妥当性の観点から検討した。探索的因子分析によって得られた 2 因子について確認的因子分析を行った結果,モデルの適合度は高い(GFI,AGFI,CFI),あるいは中程度(RMSEA)であった。このことから,本尺度は十分な妥当性をもつことが確認された。

妥当性を確認するにあたっては,たとえば基準関連妥当性など,因子的妥当性以外の観点からも検討すべきという意見もあるかもしれない。本研究の実施にあたっては,児童を調査参加者としていることから,児童の心理的負担と時間的制約を考慮してなるべく短時間で回答できるように配慮する必要があった。そこで,因子的妥当性の観点でのみ妥当性を考慮したわけであるが,今後は児童の負担を考慮した上での更なる妥当性の確認もなされるとよいだろう。参考になるのは,C-OSIVQ(Blazhenkova et al., 2011)の作成で用いられた質問紙やテストである。たとえば,空間情報処理に関しては心的回転課題(Shepard & Metzler, 1971),言語情報処理に関しては単語並び替えテスト

(Arranging words test:Ekstrom et al., 1976),物体情報処理に関しては視覚イメージ鮮明性質問紙(Isaac

& Marks, 1994; Marks, 1973)などであった。本研究で作成した尺度とこれらの質問紙やテストとの相関を確認することで,基準関連妥当性の観点からも本尺度の妥当性を検討することができる。

本研究で作成した尺度は質問紙形式であるため,回答する児童への負担が少ないという利点がある。そのため,教育現場で児童が問題解決を行う際の情報の処理や習得の方法における個人差を検討することを目的とした研究に用いる指標として活用されることが期待できる。しかしながら,項目内容の理解という観点では,児童を対象とした調査に尺度を用いる際には,児童の中でもその対象を高学年の年齢に限定すべきであること,また本尺度は試作版であり,今後,項目内容も含めて改訂される可能性があることに注意する必要がある。

利益相反

本論文に関して,開示すべき利益相反関連事項はありません。

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脚注

本研究は科学研究費補助金(22K18577)の補助を受けた。

An Attempt to Create a Cognitive Style Scale for Upper Grade Elementary School Children (trial version)

Anji FukAyA

(GrAduAte School oF teAcher educAtion, FukuShimA univerSity)

junko ohAShi

(GrAduAte School oF teAcher educAtion, FukuShimA univerSity)

junichi tAkAhAShi

(FAculty oF humAn development And culture, FukuShimA univerSity)

the jApAneSe journAl oF mentAl imAGery, 2023, 21, 1-7.

The present study aimed to create a children’s version of a cognitive style scale that can measure a tendency of object-visual, spatial-visual, and verbal thinking. A total of 197 children(4th and 5th graders)responded to the questionnaire, and we examined its reliability and validity. Exploratory factor analysis revealed two factors: the “spatial-visual thinking” factor for processing spatial information and the “verbal and object-visual thinking” factor for processing verbal information and object information. Regarding the verbal and object-visual thinking factor, we speculated that cognitive styles were undifferentiated in childhood, thus, cognitive styles related to verbal and object information may have been extracted in a mixed manner. We confirmed its sufficient reliability and validity based on internal consistency and fit index.

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