聽性瞳孔反應ニ關スル實驗的研究

第一編 正常家兎ニ於ケル聽性瞳孔反應補遺

抄録

著者ハ5頭ノ正常家兎ニ於テ音笛(エーデルマンーガルトン氏笛e². g². c³. c⁴. c⁵. c⁶)ヲ5cm水柱壓ヲ以テ外聽道入孔部ノ側方即チ鼓膜ト直角ナル方向5cmノ距離ヨリ3-5分間ノ休憩ヲ置イテ各音ニ就キ5回宛聽取セシメ。S. Engel 氏ノ Widerstandpupilloskop ヲ以テ廓大測定スルコトニヨリ聽性瞳孔反應ヲ檢索セリ。
諸實驗ハ可及的日ヲ異ニシ且ツ朝間ニ之ヲ行ヒ. 動物ヲ外部ヨリ音響ヲ遮斷セル暗室内ニ於テ15分間以上暗調應後右眼ヲ一定照度(6Volt, 3,1Amp., 15/100. 距離33cm)ヲ以テ5分間以上明調應セシメ。然ル後聽音ニヨリ惹起スル右眼ノ瞳孔變化ヲ觀測シ同時ニ最大散瞳ニ至ル所要時間ヲ計測セリ。而シテ次ノ如キ成績ヲ得タリ。
(1) 聽性瞳孔反應ハ兩側性ニ發現シ僅カノ潜伏期ヲ經テ散瞳ス。6音階 (e²-c⁶) ノ音響刺戟ニ對スル最大散瞳値ハ音階ノ高サニ正比例シテ大. 其最大散瞳ニ至ル所要時間ハ從ヒテ稍稍延長ス。
(2) 兩側外聽道ヲ開放セル場合. 音源ヲ右側外聽道側ニ置キ右眼ニ惹起スル聽性瞳孔反應ハ音源ヲ左側外聽道側ニ置キタル場合右眼ニ惹起スル同反應ヨリモ最大散瞳値大ニシテ其最大散瞳ニ至ル所要時間ハ稍ゝ短縮ス。例ヘバNo. 51ニ於ケルガ如シ。
(3) 一側外聽道ヲ栓塞セル場合. 右側外聽道ヲ開放シ該側ニ音源ヲ置キ右眼ニ惹起スル聽性瞳孔反應ハ左側ヲ開放シ該側ニ音源ヲ置キ右眼ニ惹起スル夫レ-比シ最大散瞳値大. 或ハ同樣ナリト雖モ. 最大散瞳ニ至ル所要時間ハ一般ニ短縮ス。即チ前者ハ後者ヨリモ鋭敏ナリ。例ヘバNo. 51ノ如シ。
(4) 兩側外聽道ヲ開放セル場合ノ聽性瞳孔反應ト一側外聽道ヲ栓塞セル場合ノ夫レトヲ比較スルニ. 前者ハ兩側耳ヨリ音響聽取スルヲ以テ後者ヨリ遙カニ大ナル最大散瞳値ヲ得タリ。(前表參照)
(5) 故ニ聽性瞳孔反應ニ據ル一側聽器ノ聽能檢査ニ於テハ. 非檢側ノ外聽道ヲ栓塞シテ被檢側方向ニ音源ヲ置キ該側ノ同反應ヲ計測スルヲ最モ正確ナリト確信ス。