抄録
以上述ベタル處ヲ綜合シテ, 余ハ次ノ如キ結論ニ到達セリ
1. 種々ナル迷路障碍就中迷路炎ノ治癒機轉トシテ, 屡々迷路内ニ, 先ヅ結締織ヲ新生シ, 更ニ最後ノ結果トシテ骨新生ヲ來ス.
2. 如斯迷路内骨新生機轉ニハ新生結締織中ニ先ヅ一時的ニ軟骨ヲ新生シ次デ骨新生ヲ來スモノト, 軟骨新生ノ階梯ナク新生結締織中ニ直チニ骨發生ヲ見ルモノトアリ.
3. 新生軟骨組織ハ一部化成ニヨリテ交錯性骨ニ移行シ一部ハ吸收セラレテ新タニ層板状骨ヲ新生ス.
4. 此際軟骨ノ新生ハ一部ハ内骨膜ノ細胞ヨリ分化セル造軟骨細胞ニヨルモノナルモ, 一部ハ新生結締織ノ化成ニヨリテ來ルモノナラン.
5. 新生結締織中軟骨新生ノ前驅ナク直接ニ骨新生ヲ來スモノニモ, 内骨膜ノ特殊ノ細胞即, 造骨細胞ノカニヨルモノト新生結締織ノ化成ニヨルモノトアルモノヽ如シ, 但シ化成性骨新生ハ必ズシモ非化膿性炎後ニ特有ノモノニ非ズシテ化膿性炎後ニ際シテモ其新生ヲ見ルモノナリ.
6. 如斯化成性新生骨ハ結締織骨即, 交錯性骨ノ性状ヲ呈スルモノナルガ, カヽル交錯性骨ハ化骨機轉ノ進展スルニ從ヒ, ハーバー氏層板状骨ニヨリ補填セラルヽモノナルハ正常迷路嚢ニ於ケル軟骨膜性化骨機轉ニ於ケルト同様ナリ.
7. 以上ノ如キ迷路内骨新生機轉ハ迷路ノ障碍或ハ炎症刺戟ノ程度ニヨリテ異ルモヽ如クニシテ, 先ヅ刺戟ノ最モ輕度ナル際ニハ新生結締織中ニ直チニ交錯性骨ヲ生ジ次デ刺戟ノ中等度ナル時ハ先ヅ軟骨ヲ生ジ若シクハ是ト共ニ交錯性骨新生ヲ來シ更ニ刺戟強度ニシテ内骨膜ヲ破壞セル如キ際ニハハーバー氏腔ノ造骨細胞ヨリ直チニ層板状骨ヲ生ズルモノヽ如シ.
8. 外傷性ニ迷路内ニ移入サレタル骨破片ハ, 必ズシモ壞死スルモノニ非ズシテ却ツテ迷路内骨新生機轉ノ核ヲ形成スルコトアリ.
9. 迷路内ニ於ケル, 出血ハ一般ニ他ノ滲出液若クハ濾出液ニ比シテ器質化セラルヽコト難ク, 從ツテ迷路内化骨機轉ヲ遲延セシムルモノヽ如シ.
