抄録
10℃及50℃ノ冷温水5ccヲ約20秒間ニ外聽道内ニ灌注シテ (間接刺戟) 發來スル冷温性眼震ト同一温度ノ冷温水1乃至2ccヲ數秒間ニ前庭迷路壁直接灌注 (直接刺戟) ニヨル冷温性眼震トヲ比較スルニ次記ノ相違アリ.
1). 潜伏期ハ間接刺戟ノ場合ニハ數秒乃至數十秒ナルニ反シ直接刺戟ノ場合ニハ著シク短クシテ多クハ1或ハ2秒ヲ出デズ.
2). 眼球偏位及不規則震盪期ハ直接刺戟ニヨル眼震ニ於テ遙ニ短シ.
3). 週律性震盪期ニ於ケル振幅及速度 (震盪數) ハ一般ニ間接刺戟ニヨル場合ニハ小ニシテ不規則ニ, 直接刺戟ニヨル場合ニハ著シク大ニシテ規則正シ.
4). 間接刺戟ニヨル場合ノ内, 冷刺戟ニヨル眼震ハ温刺戟ニヨル眼震ニ比シテ明ニ持續時間長ク振幅大ニ震盪數多シ. 然ルニ直接刺戟ノ場合ニハ冷及温刺戟ニヨリテ眼震ノ性状ニ顯著ナル差ヲ見ズ.
5). 冷温戟刺ニヨル動物ノ自發的體動ハ間接戟刺ニ於テ顯著ニ大ニシテ屡々眼震ノ觀察ヲ妨グルニ反シ直接戟刺ニ於テハ自發的體動著シク小ナリ.
6). 冷温性眼震ノ個體的變動ハ間接刺戟ノ場合ニ其範圍著シク大ナリ反之直接戟刺ノ場合ニハ其範圍顯著ニ小ナリ.