抄録
1. 種々ノ頭位ニ於テ廻轉刺戟ヲ與フルニ其發來スル廻轉性眼球震盪ハ一定ノ頭位ニヨリテ一定ノ變動ヲ示ス.
a. 原位及ビ背位ニ於テハ水平筋ノ振幅最大ニシテ斜筋, 垂直筋ハ震盪セザルカ乃至ハ僅ニ震盪ス.
b. 頭部上位ニアリテハ斜筋ノ振幅最大ニシテ垂直筋之ニ次ギ, 水平筋ハ最小ナリ
c. 頭部下位ニアリテハ水平筋ノ振幅頭部上位ノソレニ比シ俄然増大シ最大ヲ示シ斜筋之ニ次ギ垂直筋最小ナリ.
d. 側位ニ於テハ水平筋振幅最大ニシテ垂直筋之ニツギ斜筋最小ナリ.
e. 頭部上位以外ノ總テノ頭位ニ於テハ水平筋ノ振幅ハ最大ニシテ原位之ニ次ギ續イテ頭部下位, 背位, 側位トナリ頭部上位ハ最小ナリ.
2. 振動數ノ大ナリシモノヨリ頭位ヲ拉列スルニ廻轉中及ビ回數後共ニ同一ニシテ原位最大ニ頭部下位之ニ次ギ, 續イテ背位, 側位トナリ頭部上位最小ナリ.
3. 廻轉後眼震ノ持續時間ノ大ナルモノヨリ其頭位ヲ拉列スルニ原位最大ニシテ頭部下位之ニ次ギ, 續イテ背位, 頭部上位, 側位トナル.
4. 各眼筋ノ緩急成分ハ頭位180°ヲ異ニスル毎ニ相反ス.
5. 種々ノ頭位ニ於ケル上述ノ廻轉性盪震ノ變化ノ由テ來ル原因的考察ニ就テハ次ノ數項ヲ考慮セシム即
a. 重力ニヨル膜樣半規管ノ下垂從テ「クプラ」及ビ「クリスタ」ノ橢圓嚢内ヘノ接近又ハ突出.
b. 同一ノ刺戟ヲ前庭器ニ與フルモ各眼筋神經中樞ノ興奮ハ異リテ水平筋神經興奮最大ニシテ斜筋之ニ次ギ, 垂直筋ニ最小ナリトスル南及八木ノ説.
c. 以上ノ二主因ニ加フルニ頭位變化ニ基ク聽石作用ノ影響並ニ頭部ノ血行障碍及ビ各半規管其物ノ構造又ハ形態的差異ノ淋巴流動ニ及ボス影響等之ナリ.
