抄録
海〓及ビ家兎ヲ用ヒテ, 體温降下ノ聽器機能タル音響性耳殼反射及ビ前庭性眼球反射ニ及ボス影響ヲ研究シテ次ノ結果ヲ得タリ.
第1編 兩耳健常ニシテ音響性耳殼反射顯著ナル海〓ヲ用ヒ, 恒温水槽中ニ之レヲ浸漬シ, 頭部, 顔面及ビ上胸部ヲ除ク他ノ部分ガ水中ニ有ルガ如クシテ冷却シ, 體温ヲ下降セシメ, 音響性耳殼反射ニ對スル影響ヲ觀察セリ. 尚ホ體温 (直腸温) ノ測定ニハ熱電堆ヲ使用セリ.
體温ガ比較的緩徐ニ下降スルトキハ, 先ヅ反射ノ亢進ヲ示シ, 體温約36℃乃至35℃ニ於テ其最高ニ達シタル後, 反射ノ大サハ體温ノ下降ニ伴ヒテ漸減シ, 終ニ體温一定値ニ低下セシ時ニ消失ス. 而シテ此ノ消失スル時ノ體温ハ冷却水温ノ高低及ビ音源ノ種類ニヨリテ異ルモ, 20℃ノ冷水冷却ノ場合ニハ約28℃乃至23℃ノ間ニ, 10℃ノ冷水冷却ノ場合ニハ約26℃乃至20℃ノ間ニ在リテ, 此等ノ反射消失後モ機械的刺戟ニヨル耳殼運動ハ尚ホ持續ス. 而シテ該障碍ハ各音源ニ對シ一定ノ順序ヲ以テ發現ス. 即チ低調音ニ對スル障碍ハ早ク且ツ強ク, 次デ高調音, 中調音ノ順ニ發現ス. 骨傳導晋刺戟ニヨル音響性耳殼反射ノ障碍ハ空氣傳導音刺戟ニヨル音響性耳殼反射ノ障碍ト同一經過ヲ取ル.
第2編 上記ノ方法ニヨリテ體温ヲ下降セシメ耳殼筋ノ時値及ビ基流ト共ニ音響性耳殼反射ヲ併セ檢セリ.
冷却ニヨリテ體温ヲ一定度以下ニ下降セシムル時ハ, 時値ハ之レニ伴ヒ漸次上昇ス. 兩シテ音響性耳殼反射ノ消失時ニハ時値ハ冷却前ノ値ノ約2倍ニ達スルモ, 基流ハ冷却ノ初メヨリ認ムベキ變化ヲ示サズ.
第3編 體重ノ1-2%ノ程度ニ潟血セシ海〓ノ體温ヲ室温ニ於テ正常ニ囘復セシメタル後, 上記ノ方法ニヨリテ體温ヲ下降セシムレバ, 正常海〓ニ於ケル冷却ノ場合ニ比シテ體温ノ下降速ク, 且ツ音響性耳殼反射ノ消失スル時ノ直腸温ハ正常海〓ニ於ケルヨリ高クナル. 然レドモ正常海〓ヲ冷却シ體温ヲ下降セシメ, 音響性耳殼反射ノ消失スル時期ニ至ルモ, 動脈血ノ酸素濃度ハ正常値ニ比シテ認ム可キ變化ヲ示サズ. 故ニ體温下降ニヨル普響性耳殼反射ノ消失ニ對シテ, 血液ニヨル酸素供給ノ減少ハ其誘因トナリ得ルモ其主因トナルモノニ非ズ.
第4編 健全ナル家兎ニ就テ上記ノ方法ニヨリテ體温ヲ下降セシメ, 之レガ前庭性眼球反射ニ及ボス影響ヲ觀察セリ.
體温降下ノ初期ニ多クノ場合ニ於テ, 冷温性眼球震盪ニ於ケル震盪數及ビ其持續時間並ニ一側迷路破壞性及ビ代償性眼球震盪ノ震盪數及ビ其收縮ノ大サハ増大シテ各其最大値ヲ示シタル後漸次減少シ, 遂ニ消失スルニ至ル. 而シテ15℃及ビ10℃ノ冷水冷却ノ場合ニ其等ノ最大値ヲ示ス時ノ直腸温ハ約34℃乃至30℃ノ間ニ在リ直腸温約22℃乃至19℃ニ下降スルニ至レバ此等ノ眼球震盪ハ消失スルニ至ル. 又多クノ場合ニ於テ前庭迷路ニ何等操作ヲ加ヘザル家兎ノ體温ヲ約32℃乃至24℃ニ下降セシムレバ眼球震盪ヲ特發ス.
