いわゆる白髪染として使用される大部分の薬品は, 主薬としてパラフエニールヂアミンを用い, この主薬が酸化剤により酸化せられて黒色不溶解色素ヒノンを形成する. このものが染毛作用を呈するのであるが, この酸化作用に際しヒノヂミンなる輝発性有毒性の中間産物が生成せられる. この有毒性物質が皮膚, 粘膜等に刺戟作用を呈し, 内服せる場合は劇烈な中毒症状を来すものである. 本剤による中毒特に自殺の目的に用いたものは戦前は可成り報告を見るが戦後においてはあまり見当らない様である. 私は最近自殺の自的をもつて白髪染を服用し, 重篤なる中毒症状を呈し遂に死亡した1例に遭過したのでこゝに報告する.