抄録
聴器に見られる癌腫は, 他の諸臓器のそれに比して, 極めて稀な疾患に属し, 慢性中耳炎や, 外耳道炎に続発する事が多い為に, 癌腫の潜在に気づかず, ただ中耳炎や外耳炎の治療のみに任せられ, 癌腫と診断される時は余程その時期を失する事が多い. 従つてその診断の確定する頃には, 摘出手術不能となり, 放射線治療のみに委ねなければならぬ破目に陥り勝ちである.
私共は, 最近中耳及び外耳より発生したと思われる聴器癌の2症例に遭遇した経験から, 日々の診療に際して慢性耳漏を伴なう肉芽が外耳道に見られる時には, 必ず一応癌を疑い早期に組織学的な検査を行なわなければならぬ事を痛感したのである.