抄録
一爪を有する義歯ならば鈎状になつていても直達鏡の先端を食道粘膜と該鈎との闇に挿入し鈎を粘膜を損傷する事なく摘出する事が出来る. ただし鈎は1つでも義歯床に尖つた部があれば鈎と見なさねばならない. 尖つた部が(鈎を合せ)両側に2個ある時は除去は容易がなく1. 可能ならば義歯を回転して嵌在部を離すか, (この場合義歯を回転するというのは義歯の右側を前または後に回転する意味ではなく右側を上に左側を下にまたはその逆に廻す意味である. 食道の水平全周は一定して短かく6cm内外であるのに垂直径は80cmにも達するし,義歯は横径が一般に長くて左右に嵌在するのが常であるから水平面内に廻しても意味はない.)2. 義歯一側の尖りは直達鏡の斜面に取入れ他の尖りはヘラを或は直達鏡内から或は余等が行つたように(昭和27.1発行手術6.1)直達鏡の外側に挿入して取入れ粘膜を保護して除去するかの方法が今日迄行われて来た. 3. ただし義歯床を切つて小さくする方法はある. ところが今回余等が遭遇した列は4爪(ブリッヂまた鈎)を有する義歯であつて除去の困難を思わしめた. なお更に困難と思われた事は義歯も床も合成樹脂製でありレ線に全然陰影を与えないので嵌在状況が不明である点である. この症例に対して余等の苦心を報告し御参老に供する.