1980 年 73 巻 11special 号 p. 1832-1841
5症例の内リンパ虚脱を示した側頭骨病理組織と生前の聴力検査図を比較した. 内リンパ虚脱は種々の程度があったが, 蝸牛・球形嚢の範囲に限られていた. 虚脱による聴力の低下は虚脱自体よりもコルチ器の変性や蓋膜の変位により大きく左右される. 想定される内耳疾患はウイルス性迷路炎が1例, 原因不明の迷路炎1例, 他3例は原因不明であった. 何らかの内耳病変により内耳液とくに内リンパ調節機構の破綻を生じたために内リンパ虚脱が生じたものと推測した.