耳鼻咽喉科臨床
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我々国におけるメニエール病治療の動向
北嶋 和智斉藤 春雄北野 仁北原 正章
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1981 年 74 巻 10special 号 p. 2396-2405

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抄録

メニエール病の具体的な治療方法に関して, 1970年と1980年に, 同じ内容のアンケート調査を行った. 対象は日本耳鼻咽喉科学会会員である. その結果この10年間の治療動向を知ることが出来た. 結果を以下に示す. 発作の頻発する急性期には, 7%重曹水の注射がより多く使われる様になった. 数は少ないが利尿剤やステロイド剤も増加を示している. 間歇期には, 末梢血管拡張剤, 精神安定剤, β-ヒスチンの3者がよく使用されるのであるが, 1970年では, 3者とも同じ頻度であった. 1980年においては, 3者のうち, 末梢血管拡張剤が著明に増加した.
保存的治療が無効と考えられると, 次にとられる治療法は, 処法の変更, 専門医への紹介, 手術治療の3者である. 1970年と1980年を比較すると, 専門医への紹介が増加しているのが特徴的であった. 初期治療が無効であると判定される時期は1980年では2週間であり, 1970年の4週間と比較すると, この判定がより早くなっている. メニエール病の最終治療として, 1970年, 1980年の双方とも保存的治療, 手術的治療の2者があげられており, 10年間での変動はない. このことは最終治療法の選択のむずかしさをそのまま反映している. 但し手術治療の内容に関しては, 1980年に内リンパ嚢手術が増加し, 1970年に多かった, 迷路破壊手術, 鼓索神経切断術は著明に減少を示している.
メニエール病の治療法はなお多彩ではあるが, この10年間に一つの傾向をみることが出来た.

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