1981 年 74 巻 2 号 p. 199-205
電子線照射の移植顔面神経の再生に及ぼす影響を検討するため, 10匹の猫を用い, その側頭骨外で両側の顔面神経移植を行ない, 片側の移植部を照射して, 神経の再生状態を両側で比較した. 再生程度は, 臨床的, 電気生理学的および組織学的所見により評価した. 照射側は, 非照射側に比して臨床的回復 (眼瞼反射) は低い (5匹) か同程度 (5匹) であり, 再生神経数 (Summating Potential および組織検索) は全例 (10匹) で減少していた. 以上のように照射は神経再生に対して抑制的な効果を示すことから, 耳下腺部の悪性腫瘍などで腫瘍摘出後顔面神経移植を行った症例に術後照射を追加することは, 止むを得ざる場合を除いて避けるべきと考えた.