1981 年 74 巻 9 号 p. 1827-1834
上咽頭電極を用いた頭頂-上咽頭誘導法と従来の頭頂-耳垂誘導法の両ABRを同時記録し, 以下の知見を得た.
1) 強大音刺激時では, 前者の第II, V波の振幅は後者と比べて大きく, 反応が明瞭に記録された. なお, 前者では第I波はほとんど検出されなかった.
2) 域値付近の音刺激時では, 前者の反応検出率が良く, 両者の反応域値差は約10dBで前者の域値が低かった.
3) 後耳介筋反応の混入に関しては前者では8耳中に1耳もみられないが, 後者では8耳中4耳にみられた.
4) 以上のことより, 頭頂-上咽頭誘導法は反応が明瞭であり, かつ後耳介筋反応による干渉が少ないために, 従来から行なわれている頭頂-耳垂誘導法の補助として有用であると考察した.