耳鼻咽喉科臨床
Online ISSN : 1884-4545
Print ISSN : 0032-6313
ISSN-L : 0032-6313
突発性前庭障害例の臨床的検討
宮田 英雄
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 76 巻 9special 号 p. 2343-2353

詳細
抄録

昭和55年から3年間の vestibular neuronitis と同じ病像を呈する突発性前庭障害例51名の臨床的検討を行い, 次の結果を得た.
(1) 疫学的事項
(1) 男性に多く, 全体として30歳以上に多かった.
(2) 患側は全例一側性で左右差なく, 両側性はなかった.
(3) 発症季節には特徴的なことはなかった. 発症時間は朝が多かった.
(4) 発症前に感冒に罹患していた例は多くなかった. 誘因としては過労が多かった.
(5) めまいは回転性が多く, 1日以上持続するのが多かった.
(2) 温度反応消失例は15.7%あった.
(3) 素因検査では感冒に罹患していなかった例では, 健康成人より循環系異常 (起立試験陽性), 代識系異常 (脂質異常) を示したものが多かった.
(4) 血清ウイルス抗体価は1名に風疹抗体価が2回目の検査で上昇し, 不顕性感染であったが感染と発症の時期が同じであり本疾患の病因として何らか関与していると疑われた.
(5) 電気眼振検査は発症に近い時期でないが4名に行い, 全例電気眼振は正常に発来した. 発症時から正常で前庭神経終末, 神経節は障害されていなかったか, 回復したかのいずれかが考えられた.
(6) 温度反応の予後はCP100%例について検討した. 完全回復14.3%, 軽度回復42.9%, 回復せず42.9%であった. 不可逆的でなく回復する例は存在するが, 完全に回復することは困難であることが示された.
以上, 本疾患の臨床的検討を行ったが今後さらにその病態, 予後について検討をつづける予定である.

著者関連情報
© 耳鼻咽喉科臨学会
前の記事 次の記事
feedback
Top