耳鼻咽喉科臨床
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視性・迷路性・頸性眼運動系の動特性
浅井 栄司
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1984 年 77 巻 1special 号 p. 347-371

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抄録

正常者及び迷路機能障害者の視性・迷路性及び頸性眼運動系の動特性について検討した.
その結果, 次の事項が明らかになった.
1. 視性眼運動系伝達関数のボード線図は0.4から1.0Hzの周波数範囲で比例制御動作である. すなわち視性眼運動系は1Hzまでの視標の動きを固視できる.
2. 迷路性眼運動系伝達関数のボード線図は0.3から2.5Hzの周波数範囲で5dB/decadeの傾斜で頭部運動の周期の増加につれてゲインが増加する特性を示した. 迷路性眼反射が速い周期の頭部運動における眼運動の誘発に重要であることを示す.
3. 視性・迷路性眼運動系協同の伝達関数のボード線図は0.4から3.0Hzの周波数範囲で比例制御動作である. 視性・迷路性眼運動系の協同により3Hzまでの頭部運動中の固視が可能となる.
4. 視性・迷路性・頸性眼運動系伝達関数のボード線図は0.5から4.0Hzの周波数範囲で比例制御動作である. 頸性眼運動系は単独では顕現的な眼運動を誘発しない刺激でも, 視性・迷路性・頸性眼運動系が協同する条件では4Hzまで固視可能とする.
5. 迷路性眼反射の視性抑制の伝達関数ボード線図は0.3から3.0Hzの周波数範囲で30dB/decade の傾斜をもって頭部運動の周期の増加につれてゲインが増加する特性を示す. すなわち迷路性眼反射の視性抑制は迷路性眼運動系の動特性と比べ低い周波数ほど強い.
6. 両側迷路反応喪失例において明所での頭振り検査より得た伝達関数のボード線図は0.4から1.0Hzの周波数範囲で比例制御動作である. 両側迷路反応喪失例では頭部に1Hzを越える運動が加わる時, 固視が破綻する. また, 視性・頸性眼運動系の協同による眼運動機能の向上は少ない.
7. 片側迷路反応喪失例において, 明所での頭振り検査より得た伝達関数のボード線図は0.4Hzから1.5Hzまで比例制御動作である. 片側迷路反応喪失例では一側の迷路の働きが加わることにより頭部運動の周期が1Hz以上のときでも固視可能であり, 両側迷路反応喪失例と比べ固視できる範囲が広くなる. しかし, 正常例に比べると固視できる範囲は狭い.

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