耳鼻咽喉科臨床
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札幌医科大学鼻アレルギー外来10年間の臨床統計
患者動態, 年令分布, 臨床検査成績の集計
東 英二荒 ひろみ砂金 秀充榎本 和子朝倉 光司形浦 昭克
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1985 年 78 巻 1 号 p. 47-62

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抄録

昭和46年から10年間でアレルギー検査を施行した1700例の臨床検査を集計し, 以下の結果を得た.
(1) 10年間で鼻アレルギー患者数で2.9倍, 外来患者数に対する比率で2.3倍の増加を示していた.
(2) 受診時患者年令のピークは6~10歳 (18.2%) で, 25歳までに57.9%が受診していた. 患者の若年化傾向および性差は認められなかった.
(3) 皮内反応陽性率はH.D58.1%, ダニ50.5%, カモガヤ20.7%, チモシー17.7%, ヨモギ21.5%, カンジダ23.1%, パスパート36.4%, ブロンカスマ16.3%であった. 花粉抗原の陽性率は最近減少傾向を示している. 皮内反応陽性者の平均年令はH.D又はダニ19.8歳, 花粉23.6歳, カンジダ26.3歳で, 平均年令の男女差はそれぞれ9.4歳, 7.7歳, 8.4歳男性が若年であった. カンジダの年令分布は男女とも二峰性のピークが認められた. H.Dおよびダニ皮内反応陽性率は60%前後にプラトー化傾向が認められた.
(4) 鼻粘膜誘発試験陽性率は, ヨモギ77.9%, ダニ64.4%, チモシー60.3%, H.D59.1%, カンジダ36.1%であった.
(5) 鼻汁好酸球陽性率は若年者と高令者で高い傾向を示した. また初診時の鼻汁検査で64%の鼻アレルギー患者が陽性であった. 末梢血好酸球6%, 8%以上はそれぞれ51.6%, 20.3%の患者に認められた.
(6) 副鼻腔X線所見で49.2%の患者で何らかの病変が認められた.
(7) 発症抗原の割合は最近5年間で, H.D又はダニ, 花粉, 真菌の順に多く, 花粉ではヨモギ, チモシー, カモガヤの順に多かった.
(8) 抗原確定者の平均年令はH.D又はダニ19.3歳, 花粉27.3歳, カンジダ31.2歳であった. H.D又はダニ抗原確定者の年令分布は皮内反応陽性者の年令分布と類似していた.
(9) 発症年令は平均で全アレルギー18.2歳, H.D又はダニ15.5歳, 花粉22.7歳, カンジダ24.6歳であった. 全アレルギーでは男性で5歳までに30.7%, 10歳までに57.4%が, 女性では5歳までに10.0%, 25歳までに54.3%が発症している. 男性は女性よりも若年で発症するものの比率が高く, 平均年令でH.D又はダニ9.8歳, 花粉5.1歳の差が認められた.
(10) 治療内容ではステロイド噴霧剤の比率が増加傾向にある.

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